■■本場フランスのアマチュアレース第3回「逃げたその先にあるもの」■■
本場フランスのアマチュアレース第3回「逃げたその先にあるもの」
Text by KINAN AACA チーム代表 加藤 康則
こんにちは!KINAN AACA チーム代表者の加藤康則です。
本場フランスのアマチュアレース第3回、今回のテーマは「逃げたその先にあるもの」です。これまで同様に、フランスでのアマチュアレース経験をもとに、体験談形式でお話します。よろしくお付き合い下さい。
注:このコラムに書く内容は私自身の体験をもとに私の主観に基づいて書いていますのでその点、ご容赦ください。
フランスでよくある周回コースでのレース経験
■最初の逃げに乗れた!
今回紹介するのは、フランスでよくある周回コースでのレース経験です。
直前のいくつかのレースでは、いつもタイミングが合わず勝ち逃げが決まる瞬間を見届けるばかりで、悔しい経験ばかりが積み重なっていました。
「 今日こそは勝ち逃げに乗るぞ」
と意気込んでスタートすると、直後からアタック合戦が繰り広げられました。
集団の動きに反応できるところまでポジションを上げるのに一苦労でしたが、何とか先頭付近に上がって確認したら、まだ今日は逃げが決まっていません。 時にはスタート直後に決まった逃げがそのまま逃げ切ってしまって「時すでに遅し」なんてこともありますが、今日はまだそのような状況ではありません。
その後も頻発するアタックにがむしゃらに反応していると、4人でローテーションしているところに3人が追い付いて来て、後ろの集団は牽制状態になりました。
「決まった!やっと乗れたぞ。最初の逃げに!」
ガンガン、ローテーションを回します。この時の団結力はものすごいものがあり、 まるでいままでずっと練習してきた仲間の様に上手く回ります。あっという間に、1分半ほど差がつきました。
■横風区間でローテーションに加われなくなった結果
ところが・・・横風区間で斜めのローテーションしているうちに、だんだんと僕はいっぱいいっぱいになってローテーションに加われなくなり、集団の一番後ろにかじりつく情けない状態に・・・。そんな状態がしばらく続くとどうなるかというと。 ご存知の方も多いですよね?
ローテーションに加われないやつを連れて行ってくれるほど、フランス人は甘くありませんでした。始まってしまいましたよ。勝ち逃げ集団のさらなる絞込みが・・・。そう!アタック合戦です。もちろん自分は反応する足がなく・・・あっという間に置いてきぼりにされました。
後ろから来た第二集団には着くことができず・・・。その次の第三集団にすらつけず・・・。最後のグルペットに吸収され、順位をつけてもらえない集団で完走するのがやっとでした。
原因の分析と逃げたその先にあるもの
このような結果になったのは「横風区間でのローテーション技術がフランス人選手よりも未熟だったこと」が原因でした。
■前の選手との車間の少しの差が空気抵抗に大きく影響した
僕と他の選手では、後ろに着いたときの前の選手との車間が少し違いました(下図を参照)。
この少しの差が空気抵抗に大きく影響しました。
■きつくてもローテーションに入るようにしなければならなかった
そして横風で振られる中できつくても、上手に風下に入るようにしてローテションに入るようにしなければなりませんでした。回れなくなって最後尾になると、今回の横風区間の道幅は農道で狭く7人が全員斜めに並ぶことができませんでした(下図を参照)。
6人がいっぱいいっぱいで、最後尾の選手のみ前の選手の斜め後ろに入れません。すると、最後尾の選手はずーっと横風を受けながら走らなければならくなります(下図を参照)。
この状態が、実は一番きついので、こういう時は「きつくてもローテーションに入る」、これが鉄則です。
■足のなくなった選手は容赦なく切り捨てられる
引かない選手がいるとローテーションがギクシャクするので、苛立った選手が怒鳴ってきます。そしてアタック合戦が始まり、引かない選手を振り切るために徹底的に攻撃してきます。
逃げたその先にあるもの、それは「足のなくなった選手は容赦なく切り捨てられる」ということです。
まとめ
逃げたその先にあるものは、「脚のなくなった選手は切り捨てられる」ということ。そうならないための技術を身に着けておくことが重要■
後日談
■順位がつかなくても、良いレースをした選手は褒められる
数日後の他のレース会場で見知らぬおっちゃんに、「お前、先週のレースで逃げてた選手だろ?いい走りだったぞ!!」と肩をたたかれました。
うれしくて胸がものすごく熱くなり、「よ~し!また勝ち逃げに乗ってやる!!」と意気込んだものです。
さすが本場はレースを見る観客の目も肥えています。例え順位が順位がつかなくても、良いレースをした選手は褒められます。逆にせこい走りでそこそこでゴールしても、褒めてはもらえないのです。