ツール・ド・おきなわ対策はお済みですか? ~暑熱順化訓練~

【トレーニングメニュー】【レース対策情報・レース戦術】【期分け・練習計画】2016年10月25日 12:48

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さて、ロードレースを主戦場としている選手にとっては、ジャパンカップが終了し大きな大会はツール・ド・おきなわを残すのみでしょうか。本番に向けて長い距離を走り込んだり、レースを模したインターバルに取り組んだりしたりしておられると思います。さまざまな対策がある中で、わかっちゃいるけれどもどうしたら良いかわからない「暑さ」について幾つか研究を紹介しながら考えてみたいと思います。

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一口に「暑さ」対策と言っても二通りあります。ひとつは対症療法とでも言うべきもの。もうひとつは適応です。前者は水を飲むとか電解質の多いものを摂取する。後はプレクーリングとしてアイスベストや冷水に浸かる等があります。そちらは置いておいて、本日は後者の適応についてお話しします。

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まず「暑さ」がパフォーマンスに悪影響を及ぼすことは、皆さん体感として理解されていらっしゃると思います。具体的にどれ位影響するかと言えば、Lorenzo(注1)の研究によると暑熱順化している群とコントロール群でVO2max, LT, 1時間タイムトライアルで5~8%程度影響するそうです。

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次に「暑さ」対策にはどうすれば良いか?私が知らないだけかもしれませんが現時点でガイドライン等はなく、個別の報告があるにとどまるようです。その中でもNielsen(注2)の研究によると8~12日間45~51分40~50%VO2max, 35度、湿度85%のエクササイズで暑熱順化の効果が見られたようです。ハンター・コーガン式のパワーゾーンに変換するとだいたいエンデュランスからテンポ走でしょうか。

(他には60~90分50~60%VO2max, 40度、湿度20%。30~35分70~75%VO2max、気温40度、湿度20%。これらすべてで暑熱順化の効果あり)

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強度に関してはエンデュランスからテンポ位で良いとして、1時間近くもやらなければならないかというとそうでもなさそうです。暑熱順化には核心温(深部体温)の高さが重要なので、事前に高強度のインターバルを実施し体を十分温めた場合は時間の短縮が期待できるようです。

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以上を踏まえて実施可能なレベルにすると次のようになります。

  1. 最低でも2週間位はやりましょう。
    (8~12日間で効果が出るとあるから)
  2. 涼しい所で普段通りハードなトレーニングを行う。ローラーならば扇風機やクーラーを使う。
  3. 2が終わって(帰宅して)から部屋を閉め切って20~30分位ローラーを回す。
  4. 強度はエンデュランスからテンポが目安。
  5. 暑さが足りなければ一枚羽織ったり暖房をつけたりして調整。
  6. 疲労困憊にならないように強度・時間は適宜調整する。
    (トレーニングに悪影響を及ぼすほどやればそちらの方が問題)
  7. ローラーが使えない環境の方は、ウインドブレーカーを持っていってメインのトレーニングが終わったらすぐに着て暑い状態を作るといった工夫をする。

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最後のまとめに関しては私の個人的な経験則が多分に含まれますので、適宜調整して頂きたいと思います。どうしても暑熱環境を作り出して運動するのが困難な場合は、サウナ等も利用すると良いでしょう。ただし、Bain & Jay(注3)の研究によると暑い環境にいるだけでは運動能力の向上が見られなかったという報告があるので、なるべくならば運動を伴った方が良いでしょう。沖縄は11月でも最高気温が30度近くなります。こういう対策もあるよと覚えておいて頂ければ幸いです。

(注1)Lorenzo(2010)Heat acclimation improves exercise performance

(注2)Nielsen(1998)Heat acclimation--mechanisms of adaptation to exercise in the heat.

(注3)Bain & Jay(2011)Does summer in a humid continental climate elicit an acclimatization of human thermoregulatory responses?

 

■寄稿者:南部博昭コーチPeaks Coaching Group Japan

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Peaks Coaching Group Japan所属のコーチ。慶應義塾大学卒。東京都在住。2007年より自転車競技を開始。ストレングスコーチとして、クライアントのボディメイクやアスリートの勝利に貢献し現在に至る。ストレングストレーニング、ストレッチやセルフマッサージを含めたコンディショニング、食事指導といった培ってきた知識・技術・経験の全てを使って指導、サポートを行う。コーチングの無料相談はこちら(→リンク)。