スプリントを成功させるための秘訣と、スプリント・パワーの強化方法

【トレーニングメニュー】【レース対策情報・レース戦術】【立ち読み版】2018年11月9日 00:15

短時間 効率的サイクリング・トレーニング: 少ない練習量でパフォーマンスを最大化するためのヒント

 

■遺伝

真のスプリンターになれるかどうかは、遺伝でほぼ決まります。スプリンターは、生まれながらにしてスプリンターなのです。言い換えると「鈍足のロバが足の速いロバになることはできても、ロバが競走馬に変身することは絶対にない」ということです。ロバは単純に足が遅い動物として生まれるわけですが、これは多くのスプリンター脚質ではない選手も同じです。

生まれながらのスプリンターは、速筋繊維の比率が普通の人よりも高いのです。ただし、ロード・レースにおけるスプリンターは、トラック競技のような純粋なスプリンターではありません。というのも、ロード・レースのスプリンターの場合は、ゴール・ラインが見えるところまで、自分の足で長距離を走り抜かないといけないからです。

皆さんが諦めてしまう前に、重要なことを説明しておきます。強い選手は、スプリンターに対抗するために、ラスト200mになる前に地形を利用します。上りでアタックし、横風区間でジャンプします。これがスプリンターを振り落とすチャンスなのです。

 

「自分より速いスプリンターがいることが事前にわかっているのであれば、基本的には3つのオプションがあります。それは、アタック、アタック、アタックです」

 

■我慢

ラスト1㎞までエネルギーを節約しましょう。それまでの仕事は、できる限り楽にレースをやり過ごすことです。スプリント力がまずまずの選手の多くが、無謀なアタックでエネルギーを浪費するというミスを犯してしまいます。これは、「自分はピュア・スプリンターだ」という確信がないからでしょう。レースが始まる前に心を定め、それを最後まで守り通しましょう。スプリント勝負を目指すと決断したのであれば、100%それに注力します。そうでない場合はスプリントのことは忘れ、別の戦略を練りましょう。

 

■位置取り

スプリントは位置取りが全てです。位置取りがよくなければ、他の選手よりもスプリント力が勝っていても絶対に勝てません。強豪スプリンターをマークしておけば自然と先頭付近に位置取りできるでしょう。運がよければ、あるいは才能があれば、チーム・メイトがよいポジションまで引き上げてくれるかもしれません。

 

■スプリント・パワー

スプリント・パワーは重要です。スプリンターにとっては絶対不可欠とさえいえます。とてつもない高速でスプリントしたいのであれば、トレーニングが必要です。具体的にはスプリントや無酸素持久力に特化したトレーニングに取り組むべきであり、場合によっては筋力トレーニングが必要になるかもしれません。

 

■スプリント力の強化方法

ほとんどのサイクリストは、仲間と練習する時に、たまに楽しみながらスプリントの練習をします。これはレース最終局面のすばらしいシミュレーションになります。このようなランダムなスプリントを定期的に実施すれば、仲間とバトルを楽しみながらスプリント力を向上させることができるでしょう。ここでは、スプリント能力を向上させるためのスプリント・セッションを2つ紹介します。

 

■スプリント・プログラム1

15分:ウォーミング・アップ (強度を上げていく)

8×10秒:集団スプリント

5分:各スプリントの間の回復時間

 

このプログラムは、スプリント・トレーニングで活用すべき重要な原則をシンプルに示しています。それは「スプリントの間には、長い回復時間を挟む必要がある」ということです。長い回復時間を挟むことで、各スプリントで全力を振り絞ることができ、スプリントの時に不可欠な全ての筋繊維の1本1本にまで強い刺激を加えることができます。

よくある勘違いは、スプリント・トレーニングは「実際のレースと同じ状況を再現するためにロング・ライドの後に行うべきだ」というものです。疲労し、脱水状態に陥り、グリコーゲンが枯渇した状況では、集中力やモチベーションもおそらく失われていることでしょう。こういった状況は、心理的にはレースに近いといえるかもしれませんが、スプリント力の強化に最適なトレーニングかといえば、それは絶対に違います。

 

■スプリント・プログラム2

15分:ウォーミング・アップ (強度を上げていく)

5×10秒:パワー・スプリント

5分:各スプリントの間の回復時間

バイクの速度を落としてから、53×14~16といった高いギア比で、最大限加速します。

 

このエクササイズは、バイクに乗りながらできる筋力トレーニングの中で、おそらく最も最大筋力まで近づくことができるメニューです。また、回復に必要な時間も最小限なので、毎週2~3回程度、無理なく取り組むこともできるでしょう。ただし、各スプリント間の回復時間は、確実にしっかり回復できるように、十分な長さを確保することが重要です。

 

■スプリント・トレーニングの分析方法

スプリント・トレーニングについても他のメニューと同様に、後で結果を分析するとよいでしょう。パワー・スプリントのメニューは純粋にスプリント・パワーのトレーニングなのでシンプルですが、集団スプリントは、テクニック面、戦術面、生理面といった様々な要素が組み合わさったトレーニングなので、分析はやや複雑になるかもしれません。繰り返しになりますが、パワー・メーターがあれば、客観的なフィードバックを得られるので、すばらしい分析ができます。

 

短時間 効率的サイクリング・トレーニング: 少ない練習量でパフォーマンスを最大化するためのヒント

 

  • 記事出典:ジェスパー・ボンド・メデュス著・高嶋竜太郎訳・『短時間 効率的サイクリング・トレーニング』(OVERLANDER株式会社)の抜粋
    ※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。