短時間高強度のパフォーマンス改善に高い効果があるソーダ・ローディング
炭酸水素ナトリウム(重曹)は、乳酸系のエネルギー供給回路を使って「短時間で高いパワーを出す場合の持久力を高める効果がひじょうに高い」ことが多くの研究で示されている。
ソーダ・ローディング
■炭酸水素ナトリウムが効果的な理由
高強度で運動すると、乳酸から放出される水素イオンがエネルギーを出す時に必要な酵素の働きの邪魔をする。しかし 炭酸水素ナトリウムを運動前に事前に摂取しておくと、水素イオンの除去が容易になることから疲労するまでの時間を遅らせることができるのだと考えられている。
■さまざまな実験結果
ある実験では、炭酸水素ナトリウムを事前に摂取することで、超最大強度で運動した時の疲労困憊までの時間が27%も改善したと報告されている。さまざまな実験や実地テストの結果、「炭酸水素ナトリウムの運動前の摂取は、45秒~6分程度の持続時間で高強度で連続して(もしくは間欠的に)運動する場合に特に高いパフォーマンス改善効果を発揮する」という結論が出ている。
■炭酸水素ナトリウムの摂取量の目安
摂取量の目安は、体重1㎏あたり約300mgで、体重が60㎏の男性であれば18gとなりこれを1リットル程度の水分とともに運動の1~2時間前に飲む。これを「ソーダ・ローディング」という。
■注意点
重曹は過度に摂取しなければ安全だが、人によっては腹痛・下痢・むかつき・膨満感などの胃腸の不快感が伴うこともある。またドーピング対象ではないが、「ソーダ・ドーピング」として批判する人もいるので、使用するかどうかは最終的に各人が判断する必要がある。
■レースや練習種類による向き不向き
またロード・レースのような長時間の運動時には、万が一腹の調子が悪くなるとパフォーマンスに悪影響が出る可能性が高 いので、あまりおすすめできない。他方、短距離・高強度のトラック競技などでは利用価値があると思われる。またローラーで、短時間高強度でしっかり追い込みたい時などに利用するのも一つの手だろう。
参考文献
- メルビン・ウィリアムス著, 樋口満監訳・『スポーツ・エルゴジェニック』・P274~276・大修館書店