練習中やレース中に走りながら摂る補給食
1時間以上の練習やレースに出るのであれば、体の中に蓄えているエネルギー源だけでは足りなくなるので、補給食が必要になります。乗り始めたばかりの頃であればとても信じられないかも知れませんが、補給食は少し練習すれば走りながら食べられるようになります。
補給食の基本
■補給食を少しずつ食べることで長時間ノンストップで走れる
自転車用のウェアの背中には、たいてい2~3つのポケットがついています。そこに補給食を入れておいて、少しずつ食べていくのです。長いレースや練習になると1日で7~8時間も走ることがあります。上位入賞するような選手になるとほとんどが走りながら補給食を少しずつ食べて、ノンストップで走り切ってしまいます。
■高炭水化物食品を摂る
まず補給食の大前提を説明します。
それは「高炭水化物食品を摂る必要がある」ということです。なぜかというと、走行中のエネルギー源としていちばん大切なのが炭水化物ですが、体の中には1,500~2,000kcal程度しか蓄えておけません。つまり2~3時間も走ると、体内の炭水化物は枯渇して動けなくなってしまいます。そうならないためには、必ず使った分だけ炭水化物を食べて、どんどんエネルギー補給していかなければならないのです。
■練習やレース中に脂肪を補給する必要はない
実は「脂肪」も、走行中のエネルギー源としてかなりの割合で使うのですが、走行中に油分を摂っても残念ながらすぐエネルギーに変えることはできません。それに油分を激しい運動中にたくさん摂るとお腹にもたれて気分が悪くなってしまうリスクがあるので、積極的に摂る必要はほとんどありません。そもそも脂肪の場合は体脂肪として莫大な量が蓄えられており、1回の練習やレースで枯渇することはまずありえないので、わざわざ補給する必要はないのです。
■肉や野菜も、運動中にはあえて摂る必要はない
肉や野菜も運動の最中にはすぐエネルギー源として使えない上に、消化の妨げとなり胃腸の負担を無駄に増やしてしまうので、あえてたくさん摂るメリットはほとんどないでしょう。
■脂肪を燃焼するには炭水化物が必要
上の説明を読んで、
「体脂肪が使いきれないくらいあるのだったら、炭水化物を摂らなくても、脂肪だけで走れるじゃないか。そうすればより脂肪が使えてより効率的にやせられる!」
と思った人もいるかも知れません。これは炭水化物と脂肪の関係でよくある誤解なので、補足説明しておきます。
実は脂肪をエネルギーとして使うのには、炭水化物が必要になります。炭水化物は脂肪を燃焼するのにひつような、いわば「着火剤」のような役割を果たします。ですから体内の炭水化物が枯渇してしまうと、せっかくまだ膨大に残っている脂肪を使おうと思っても使うことができません。結局「体内の炭水化物がなくなると動けなくなってしまう」ので、走り続けるためには炭水化物を継続的に補給していかなければならないということです。
補給食の種類
補給食を大きく分けると、固形物系とジェル系の2種類があります。
■固形物系の補給食
補給食の代表格でコンビニで売っているもので、走行中でも比較的食べやすいのは、「カロリー・メイト」「ひとくち羊羹」「ひとくち ういろう」「薄皮つぶあんパン」「ジャムパン」などです。「おにぎり」や「菓子パン」も使えないことはないのですが、やや強度が高くて息が「ハアハア」しているような時は、のどにつまってしまい余計に呼吸が苦しくなってしまうので、あまりおすすめではありません。
■ジェル系の補給食
ジェル系で同じくコンビニで手軽に買える物の代表格は、ウィダーinゼリーがあります。ジェル系の利点は、消化吸収がよい点、水分を同時に補給できる点と、のどにつまったりすることがない点です。しかし消化吸収がよい分腹持ちはあまりよくありませんし、ジェル系ばかりで補給しているとお腹の調子が悪くなることもあるので、その点は注意が必要です。
固形物系とジェル系の使い分け
固形物系とジェル系の使い分けとしてよくあるパターンが、前半は固形物系・後半はジェル系というパターンです。この理由は次のようなものです。
■前半は固形物系
練習やレースの前半は、まだ胃腸も元気で体に蓄えられているエネルギーも多いので、腹持ちがよいものの消化吸収に時間がかかる固形物系をなるべくとります(補給食は、ふつう運動開始後1時間くらいから食べ始めます)。
■後半はジェル系
長時間の運動も後半になると、胃腸が弱ってきて消化吸収能力が落ちてくるのと、体に蓄えられているエネルギーがかなり少なくなってきている分を速やかに補充しないといけないので、胃腸に負担がすくなく消化吸収の速いジェル系を主体にとるようにします。
■「自転車専用のもの」と劇的にコストを下げられる「自作」
固形物系もジェル系も、自転車専用のものがあります。少し割高ですが使い勝手やよく消化吸収がよいものが多いので、重要なレースなどでは使ってみるとよいかも知れません。また裏ワザ的な方法としては、市販のジェル系の原料を別途購入して自作するという手もあります(劇的にコストを下げられます)。
レース前に試しておくとよい
どのような補給をするのが効果的かは、レースや練習の種類や体質によってかなり変わります。その意味では、特に大事なレースの前には、最低一度は練習などで試して「問題がないかどうか」を確認しておくとよいでしょう。