シニア選手の「トレーニング」と「回復」の重要ポイント
若い選手にありがちな失敗は「パフォーマンスに悪影響があるトレーニングや生活習慣をしがちなこと」だが、それでも若さゆえに高いパフォーマンスを発揮することができることが多い。年齢を重ねるにつれそういった失敗は犯さなくなるものの、特に50歳を超えると体に変化が現れる。今回は、ジョー・フリール氏のブログを参考に、「体の変化」を踏まえたシニア選手の「トレーニング」と「回復」の重要ポイントを紹介する。
加齢に伴う「体の変化」
50歳を超えると現れる「体の変化」には次のようなものがある。
- 男性ホルモンレベルの低下
- 筋肉量の減少
- 骨減少症や骨粗しょう症
- 酸塩基の平衡失調
- のどの渇きに対する感度の低下
- 体重増加の傾向
- 軟組織の弾力性低下
- 酵素活性の低下
- 暑熱耐性の低下
シニア選手の「トレーニング」と「回復」の重要ポイント
それではシニア選手が意識した方がよい重要ポイントは、具体的にはどのようなものなのだろうか。ジョー・フリール氏は「運動強度」「筋トレ」「睡眠」「栄養補給」の4点を挙げ、以下のようにかなり具体的なアドバイスをしている。
■運動強度:IF 0.8超の短時間・高強度を目安にする
体力を維持向上させるのに必要なトレーニングの要素は「持続時間」「強度」「頻度」の3つだが、加齢とともに長時間・高強度でトレーニングすることは難しくなる。加齢による体力の低下の進行を遅らせるには、低強度で長時間練習するよりも短時間でも高強度で練習した方が効果が高いので、練習の中心は筋持久力強化や無酸素系の持久力の強化やスプリント練などに重点を置いた方がよい。運動強度を目安にするならば、IF(強度係数)が0.8(80%)超が望ましいだろう。このような短時間・高強度で重点的に練習に注力すれば、男性ホルモンの分泌が促進されるので、結果的に筋肉量を維持できるだろう。
■筋トレ:重めの負荷で骨密度を維持する
ウェイトを使った筋トレは、男性ホルモンの分泌を促進し骨密度を維持するうえでベストの方法だ。軽い負荷ではあまり効果がないので、重めの負荷で行うことが必要なる。ただし自転車に乗るのに支障がでてはいけないので、かなりしっかりとした計画にもとづいて脚に負荷をかける必要がある。筋トレを行うのに抵抗がある場合は、毎週3~5㎞程度ウォーキングかランニングをすることが望ましい。骨密度の維持を重視するのであれば、自分の体重を使った筋トレよりも、重いウェイトを使う筋トレの方が効果が高い。筋トレはそれなりの頻度で定期的に行う必要がある。
■睡眠:適切な睡眠時間の確保と「質」が重要
上記のような方法でトレーニングするとトレーニング強度は高くなり、筋肉にストレスが蓄積していくはずだ。このストレスを取り除くには睡眠の時間と質がひじょうに重用になる。生活をより活動的にする意味でも、シニア選手は適切な睡眠時間を確保することに特に注意したほうがよい。
■食事:練習直後に炭水化物とタンパク質を摂取する
食事で注意すべきは、強度の高い運動直後に炭水化物とタンパク質を摂取することと、その日の間中にビタミンやミネラルを補給することだ。長時間・高強度の運動をする場合は運動中に糖分を摂取し(短時間であれば水だけでOK)、練習直後のなるべく早いタイミング(理想的には30分以内)に炭水化物(デンプン質)の食事をとる。これにより速やかに筋グリコーゲを再充填できる。その後は、炭水化物の摂取量は大幅に減らすほうが望ましい。次に野菜や果物や動物の肉を食べてビタミンやミネラルを補給する。これらのアルカリ性食品は体内の酸塩基バランスの調整にも役立つ(逆に酸性の食品の摂取は、骨のミネラルや筋肉量の減少につながる)。
参照URL
- Joe Friel・『Q & A: Recovery and the Aging Athlete』
http://www.joefrielsblog.com/2011/11/q-a-.html