インターバル・トレーニング前の短時間で効果的なウォーミング・アップ方法
運動前のウォーミング・アップは、パフォーマンスを高める効果があることはよく知られている。今回は、ウォーミング・アップの生理学的な効果・基本原則・注意点や「インターバル・トレーニング前の短時間で効果的なウォーミング・アップ方法」について紹介する。
体温と代謝プロセスの関係
ウォーミング・アップがパフォーマンスを高める第一の理由は、体温が代謝プロセスに大きく影響するからだ。
■体温上昇で代謝酵素が活性化
体温が上がると代謝に関わる酵素の働きが活性化し、筋肉内で化学反応が進みやすくなる。『スポーツ生理学』では「体温が1度上昇すると細胞の代謝率が13%増加した」「筋温の5度の上昇によって筋肉の収縮速度や最大パワーが10%増加した」との研究結果が紹介されている。
■酸素がヘモグロビンから離れやすくなる
また体温が高いと血液中の酸素がヘモグロビンから離れやすくなり、筋肉で酸素を利用しやすくなる点もプラスに働くと考えられている。
■神経の伝達速度が高まる
その他にもウォーミングアップによって、神経細胞を伝わるインパルスの伝達速度が高まり、これが筋肉の収縮速度に影響を与えると考えられている。
インターバル・トレーニング前の短時間で効果的なウォーミング・アップ方法
■ウォーミング・アップの基本原則
インターバル・トレーニング前のウォーミング・アップの基本原則は「低い負荷から始め、少しずつ負荷を上げて行くこと」だ。こうすることで徐々に酸素消費量を増やしていき、インターバル開始時に十分に酸素を使ってトレーニングできる準備を整えることができる。逆にいきなり高い負荷から始めてしまうと、酸素不足が原因で無酸素パワーが多く使われてしまい、やる気やパフォーマンスが低下してしまうリスクがある。
TRAINING4CYCLISTS.COMでは、インターバル・トレーニング前の短時間で効果的なウォーミング・アップ方法として以下のような方法を奨めている(ただし個人差があるので適宜アレンジしたほうがよい)。
■インターバル・トレーニング前の短時間で効果的なウォーミング・アップ方法
- 100W以下の軽い負荷からペダリングを始める。
- 2分毎に体力レベルに応じて35~50Wずつ負荷を上げて行く。
- ターゲット心拍数の下限に到達したら、少し休憩する。
- 3~5分間楽に流す(時間がない時はこのステップは飛ばしてよい)。
- インターバル・トレーニングを開始する。
■注意点:競技前のアップは「少ないほどよい」との指摘がある
注意点としては、「あまりに長時間ウォーミング・アップを行うと筋収縮が減少し筋疲労が増加する可能性があること」だ。『虎の門鍼灸院ノート』では、長時間のウォーミング・アップがパフォーマンス低下につながったという最近の研究結果を参考に、競技前のウォーミング・アップは「less is more(少ないほどよい)」との指摘がある、と紹介している。
最終的に最適なウォーミング・アップ方法は自分で試行錯誤してみつけるしかないが、高強度のインターバル前のウォーミング・アップは、レース前のウォーミング・アップのよい予行演習になる。その意味では、普段からさまざまなウォーミング・アップ方法を試し自分にとってのベストの方法(時間や強度など)を見つけておけば、重要なレース時にきっと役に立つだろう。
参照URL
- TRAINING4CYCLISTS.COM・『How to Make a Quick Warm-Up before Interval Training』
http://www.training4cyclists.com/quick-warmup/ - 虎の門鍼灸院ノート・『ウォーミングアップは少ない程良い』
http://blog.goo.ne.jp/dbqmw440/e/46214c89cce16eba9d35031aeb537e1e
参考文献
- 青木純一郎, 佐藤佑, 村岡功編著・『スポーツ生理学』・P41~45・市村出版