パワー・トレーニング・バイブル【立ち読み版】書評~第1章
書評
「本書は, パワー・メーターの世界的権威によるパワー・トレーニングの最高の指南書だ」
-ジョー・フリール 世界的に著名なコーチで『サイクリスト・トレーニング・バイブル』の著者
「本書には今までトップ・プロしか知らなかった情報が詰まっていて, それを惜しげもなく一般のサイクリストに教えてくれる」
-コンペティション・マガジン
「本書はもっと強くなりたいと思っているトライアスリートの必読書だ。本書のステップを踏んでいけばパワー・データの意味を理解し日々のトレーニングに応用できるようになる。私も本書のおかげでFTP が30W も上がった」
-テラ・カストロ, トライアスロンのプロ選手
「パワー・メーターがもっと安くなればトレーニング方法に革命が起きるに違いない。レースで必要なパワーを正確に調べそれをベースに練習すれば, ライバルより優位にレースを展開できるようになるだろう。本書はパワー・メーターの性能を最大限引き出すためのマニュアルの決定版だ。本書を読めばパワー・トレーニングの世界最高の専門家が開発した最新のトレーニング方法を学べ, 練習の質を格段に高いレベルに引き上げるチャンスを得られるだろう。自分もこのチャンスを活かそうと思う」
-ジェレミア・ビショップ, マウンテン・バイクのプロ選手
「本書はすばらしいトレーニング・マニュアル本だ。 理系の読者も十分満足いくような科学的説明や分析が満載なうえに読み物としても面白い。パワー・トレーニングに熱心でなくてもかなり役立つ内容といえる」
-ステファン・チュン博士, PEZCYCLINGNEWS.COM
「自分の成長を数字で実際にこの目で確認できたのは30 年間のレース経験の中でも初めてのことで, 年甲斐もなく興奮しちゃったよ」
-フィル・ホワイトマン, 競技歴30 年のベテラン選手
目次
序文
前書き
謝辞
はじめに
略語集17
第1章 パワー・トレーニングとは
第2章 パワー・メーター
第3章 パワー・トレーニングの始め方
第4章 自分の得意分野と苦手分野を知る
第5章 最適負荷でのトレーニング
第6章 パワー・データの分析
第7章 平均パワーの限界を打ち破る
第8章 パフォーマンスの調整方法
第9章 トレーニング計画・レベルアップ編
第10章体力の変化を見る
第11章トライアスロン選手のために
第12章レースへの活用 - より速く走るために-
第13章その他競技への活用BMX, シクロクロス, トラック競技, ウルトラ・エンデュランス
第14章まとめ
補足資料A その他参考情報
補足資料B 練習メニュー
用語解説
索引
著者紹介
序文
本書の初版が2006 年に初めて出版されて以来, 自分の本棚のいちばん目立つところに置いています。よく参考にするので, すぐ手が届く所に置いているのです。この本と同じくらい信頼できる本は, ほとんどありません。私はこの本から多くのことを学びましたが, きっと本書を読んだ人はみなそうでしょう。パワー・メーターを使ってトレーニングをしているサイクリストと話をすると, 決まって彼らも「ハンター・アレンとコーガン博士の本を持っているよ」といいます。これは, ある意味当然かも知れません。というのも本書は真剣に自転車競技に取り組んでいる選手のために書かれた初めてのパワー・トレーニングのマニュアル本だからです。そして本書は今もパワー・メーターを使うすべてのサイクリストにとっての「バイブル」であり続けています。
もしこれからパワー・トレーニングを始めるのであれば, この本を読んで 正しい方法を学んでから始めて下さい。まずは本書で学んだ内容を実際の練習で使ってみるとよいでしょう。そうすれば, 皆さんもきっと他のサイクリストがもう知っていることに 同じように気づくと思います。それは「パワー・トレーニングをすれば, もっと強くなれる」という事実です。本書はその方法を教えてくれます。
初版(英語版)を読んだことがある方もいらっしゃるかも知れませんが, 第2 版にはあなたがトレーニングで実際にすぐにでも使いたくなるような, 新しいコンセプトが書き加えられています。その中でもいちばん注目すべきはシーズンでいちばん重要な時期に「好調」で臨むための方法論ではないかと思います。本書の中では, 目標のレースで最高のパフォーマンスを発揮するために, パフォーマンス・マネージャー・チャート(TrainingPeaks 社が販売するWKO+ というソフトにあるパワー・データの分析機能)を使って「好調」を数値化して練習計画に落とし込む方法が説明されています。私自身, 過去3 年間自分の顧客のトレーニング内容を決める際には, このチャートの情報に頼りきりでした。
トライアスロンのように一定のペースで走り続ける競技では, ペーシングがタイム短縮の「鍵」となります。第2 版ではトライアスロンのためのパワー・トレーニング方法専用に新しい章を設け, この難しい技術の習得方法を説明しています。WKO+ を利用するのであればトライアスロン選手にとってメリットがあるのはランニング・トレーニング・ストレス・スコア(rTSS)でしょう。rTSS は本書で初めて発表された概念で, 11 章に説明があります。複数のスポーツを同時に練習しなければならない時, 特に「3 種類のスポーツでピークを同時に実現させたいと思っているトライアスロン選手にとって, パフォーマンス・マネージャー・チャートはひじょうに「使える」ツールです。
今後新たにパワー・トレーニングに注目するべきアスリートは, トライアスロン選手だけに留まりません。シクロクロス, トラック競技, マウンテン・バイク, BMX といった競技でも, トレーニングやレースで必要となるパワーのレベルを, データで確認することができます。
パワー・メーター市場では新しい機能を備えた新製品が次々と発売されており, どんどん変化しています。本書には, あなたにとって最適なパワー・メーターを選ぶ際に役立つであろう最新のパワー・メーターのハードに関する情報やその機能の比較表が掲載されています。もしあなたがパワー・メーターを使って賢くスマートにトレーニングしてレースでもっと速く走りたいのであれば, まずは本書を読むことをお奨めします。本書はトレーニングやレースでパワー・メーターを最大限活用するための「バイブル」なのです。
ジョー・フリール
コーチ・作家・TrainingPeaks 社の共同設立者
前書き
私たちが本書の第2 版を上梓した理由は, パワー・トレーニングに関する「最新のツール」,「テクニック」,「理論」そして「新しい原則」を皆さんにお伝えしたかったからです。第2 版では基本的な内容についてはもちろん最新の情報に更新してありますし, それに加えて全く新しいセクションを付け加えました。あなたもこれらの情報とパワー・メーターを駆使すれば, 練習の質を高め目標のレースにピークを合わせることができるようになるでしょう。初版と同様に「パワー・データの収集と分析方法」,「パワー・メーターを使って自分の得意分野と苦手分野を明らかにする方法」,「パワー・メーターを使って, 実行可能な練習計画を作成しレベルアップする方法」そして「レースでのパワー・メーターの効果的な使用方法」といったことについて説明しています。またパワー・メーターを購入する際にベストの選択ができるように, 各種パワー・メーターの機能とソフトについて最新の情報を掲載しました。さらに新しいコンセプトである「疲労プロフィール」を紹介しています。この概念を知っていれば, レースの際に正しい戦術を取れるようになります。初版でも紹介した「パワー・プロフィール」と「疲労プロフィール」を併用することで,もっと強くなるために強化しなければならない「自分自身の苦手分野」を知ることができます。
初版刊行後, 私たちはトライアスロンでのパワー・メーターの活用方法を研究してきました。そしてバイク区間でパワー・メーターを最大限に活用する方法(加えてランニングでのGPS の活用方法)を学びました。第2 版では, その成果を皆さんにお伝えするために丸々1 章を割きました。またBMX, トラック競技, シクロクロス, ウルトラ・エンデュランス・マウンテン・バイクについての情報も新たに追加しました。シクロクロスのレースに向けて準備する際に役立つレースで勝利の「鍵」となる練習メニューも紹介しています。また,マウンテン・バイクのレースでよりよい順位でゴールするための世界最高の戦略も学ぶことができます。
パワー・データを活用してトレーニング計画をレベルアップさせていくことは, 時に少し難しいかもしれません。しかし本書では「16 週間・FTP 向上計画」と「8 週間・ピーク・パフォーマンス計画」を追加し「これらの計画がどのようにあなたの体力向上に役立つか」を説明しています。どちらかの計画があなたのトレーニング目標にぴったり合うことは十分にありえる話だと思います。さらにこの2つの計画を補完する意味で, 毎日行うことができる練習メニューを他にも多数掲載しました。これらのメニューを実践すれば正しいトレーニング・レベルで練習できることを保証します。
ちょうどよいタイミングにピークを持っていく方法は, ずっと長い間ごくわずかなトップ・レベルのコーチや選手しか知らないまるでとらえどころのない「匠の技」のようなものでした。これは試行錯誤するだけでは何ともしがたく, 一般選手がこの方法を完全に習得するのはひじょうに困難でした。しかしパワー・メーターは, この秘密のベールをいとも簡単にはがしてくれたのです。この第2 版では, 目標日にピークを持っていく方法を詳しく説明しています。最後に, 長期トレーニング負荷と短期トレーニング負荷, 適切なテーパリング(レースに向けて調子を上げるために練習量を減らす調整方法)の間にどのような関係があるかを説明しています。トレーニング・ストレス・バランスを上手く調整することが, 皆さんが望むレースにピークをもっていく「鍵」となります。本書で紹介している調整方法を使えば「うまくいくように神頼みするしかない」といったことはもうなくなります。
あなたがどんな競技に取り組まれていたとしても, 目標とするレースで最高の実力を発揮するためには, 最新のパワー・トレーニングの原則をきっちり学んだほうがよいと思います。本書の内容をぜひしっかり理解して下さい。私たちは, 本書がパワー・メーターを使ってトレーニングする際のよい参考書になると確信しています。本書を何度も何度も読み返すことで, あなたの実力はメキメキと伸びていくことでしょう。
パワーはもうあなたの手の中にあります。さあ, そのパワーを存分に活かして下さい。
- ハンター・アレン, アンドリュー・コーガン博士
はじめに
本書はパワー・メーターを活用して実力を伸ばしていくための手順を学びやすいように編集されています。パワー・メーターはかなり昔からありますが(室内練習用のパワー・メーターやエルゴメーターは何と1800 年代の後半には, もう発表されていました), 最近になってようやく技術の進歩のおかげで購入しやすい価格になってきたので一般のサイクリストも入手できるようになりました。パワー・メーターの技術が飛躍的に進歩したのは, この15 年程と比較的最近なので, パワー・メーターの有効な活用方法はいまだに一般にはあまり広く知られていません。パワー・メーターを使ったトレーニング方法は,かつてはトップ・レベルのコーチやごく限られたエリート選手しか知らない「秘密」でした。私たちは, 今まで一握りの人しか知らなかったパワー・メーターの活用方法を本書でわかりやすく解説することで, 一般のサイクリストの皆さんが目標とするトレーニングやレースで実力を最大限発揮できるようお手伝いしたいと思っています。本書を読めばホビー・レーサーでも「プロを目指して頑張るぞ」と思うくらい, やる気に火が点くことでしょう。
著者紹介および本書執筆の経緯
運動生理学者のアンドリュー・コーガン博士は, 1980 年前半にエルゴメーターを使った運動生理学の研究所で働き始めました。彼は研究所で特定の運動負荷(ワット)を指標とする実験を繰り返す中で「循環器系がどのように機能しているのか」,「血中乳酸値のレベルがパフォーマンスにどのように影響を及ぼすか」といったことを学び, これらをテーマにして50 以上もの論文を書き上げました。彼は室内用のエルゴメーターを活用してトレーニングやレースで大きな成果を挙げていましたが, 1990 年代後半には安価で自転車に搭載可能なパワー・メーターが発売されたことを受けて屋外での練習やレースのデータを集め始めました。研究室でのさまざまな実験の結果からパワー・データを使って「レースで必要となるレベルを数値化すること」,「ペーシングの技術を磨くこと」,「体力の変化を見ること」は, すべてのサイクリストにとって有益だとわかっていましたが, 一方で膨大な情報を理解し活用するのは現実的にはかなり難しいという限界も見えてきました。そこで彼はパワー・メーターを使ったトレーニング方法の作成に着手し, アメリカ・サイクリングという団体でそれを教えコーチし始めました。本書にはその時の指導内容のほとんどが含まれています。
トップ・レベルの選手のコーチでかつて自転車競技のプロ選手であったハンター・アレンは, ピークス・コーチング・グループのオーナーでもあります。
彼は1995 年以降持久系スポーツの選手をコーチしており, 1990 年代後半の早い時期からパワー・メーターを使って選手を指導してきました。しかしパワー・トレーニングを続けるにつれて多くの疑問を抱くようになり「これは,新たな手法を開発して解決するしかない」と考えるようになりました。そこで2003 年にコーガン博士とケビン・ウィリアムスと協力して「Training PeaksWKO+」というソフトを開発しました。このソフトには「練習内容の分析」,「レースデータの比較」,「体力の変化を確認」できる機能が盛り込まれていました。彼はこれまでに数千ものパワー・データの分析を重ね, 数百人を超す選手をパワー・トレーニングをベースにコーチして成功に導いてきました。今や彼はパワー・トレーニングの世界的な権威の一人です。
現在, 私たちは「パワー・メーターが着実に普及してきた」と実感しています。現にプロのサイクリストは, パワー・メーターを使ったトレーニングやレースでのパワーの値を公表し, パワー・メーターを使っているサイクリストの数は年々増えています。また値段も下がり, 以前よりずっと入手しやすくなりました。ソフトの使い勝手もよくなっています。だからこそパワー・トレーニングを始めるベストタイミングは「いま」だといえます。
パワー・トレーニングの始め方
パワー・メーターは「もっとFTP を高くしたい」と思っているサイクリストにとって, かつて存在したどの機材と比べても最高のものです。パワー・データを分析すれば, 心拍計やスピード・メーターでは決して知りえなかったあなたの隠された苦手分野がわかります。そのデータ分析能力こそがパワー・メーターを有効に活用する「鍵」です。
あなたの自転車に装着されている他の機材とは異なり, パワー・メーターを使えば長期にわたる体力の変化を実際にその目で見て確認できます。あなたは, 今回のヒル・リピートの結果を先週のデータと比べてみたくはないですか?今年の20 分のベスト・タイムと2 年前のベスト・タイムを比較してみたくありませんか?過去3 年間にわたって平均ケイデンスが変わっているかどうかを見たくないですか?パワー・メーターを使えば, たった数回マウスをクリックするだけで簡単にそのようなデータ比較ができます。
また「調子がよくなくパッとしなかったシーズン」と「好調でレース成績がよかったシーズン」で「いったい何が違ったのか」を調べることもできます。
第1 章では, パワー・トレーニングが, 従来のトレーニングとどう違うのかを説明します。第2 章では, ハードやソフトについて「そもそもパワー・メーターとは何か」,「どのように動くのか」,「各製品の特徴や『売り』にしている機能は何か」,「期待できる主要機能は何か 」といったことを詳しく説明します。もしこれからパワー・メーターを購入するのであれば, 各製品の比較分析のセクションが役に立つと思います。
第3 章では, FTP を計測しその数値をもとにトレーニング・レベルを設定する方法を説明します。第4 章では, パワー・メーターを使ってあなたのサイクリストとしての「得意分野」と「苦手分野」を明らかにする方法を紹介します。第5 章では, ワットをベースにした練習メニューを「タイム・トライアル」,「ヒル・クライム」,「インターバル・トレーニング」といった具体例を用いて説明します。またパワー・トレーニング・レベルの目標設定方法についても併せて紹介します。
第6 章では, 走行データの分析方法を説明します。この章には, パワー・データをもとにして作成した重要なコンセプトのグラフの実例が多数掲載されています。第7 章では, 前章のテーマを引き継ぎデータをより深く掘り下げるために「標準化パワー」,「強度係数」,「トレーニング・ストレス・スコア」といったコンセプトについて説明します。
第8 章では, パワー・データを使ってピークを調整する方法を説明します。この章を読めば, さまざまなコンセプトが実際にどれほど有効か理解できることでしょう。
本書はトレーニング方法の紹介だけに特化した内容ではありませんが, 第9章ではパワー・トレーニングの実例を2つのケース・スタディーとして紹介しています。補足資料B には, たくさんの練習メニューを掲載しています。これらは, あなたが実際にパワー・トレーニングをする際, 特に強化しないといけないレベルに集中して取り組み「パワー・プロフィール」を向上させ「疲労抵抗力」を強化していく上で参考になると思います。
第10 章では, 長期間にわたって集めたデータの活用方法を説明します。例えば, パワー・データを使えば長期間にわたる体力の変化を確認でき, また年度の違う同じレースを比較することもできます。ここでもう一度「目標を達成するためには, どのようにパワー・メーターのソフトを使えばよいか?」を具体例を挙げて説明します。
トライアスロン選手がパワー・メーターを使うメリットは, ひじょうに大きいといえます。第11 章では, その中でも「効果的なペーシング方法」について重点的に説明しています。また長距離と短距離それぞれのレースに適したトレーニング方法と, レースで勝敗を分ける「鍵」となるポイントについてアドバイスします。
第12 章では, ロードレースでパワーメーターを使ってピークを調整する方法を詳しく説明します。第13 章では, シクロクロス・BMX・トラック競技,そしてウルトラ・エンデュランスといった他の自転車競技でのパワー・メーターの効果的な使用方法を説明します。第14 章は, これまでの重要なステップの要約です。
本書ではたくさんの専門用語が使われています。もし読者の皆さんが, 私たちと同じように数字やグラフが大好きならばよいのですが, そのような方ばかりではないでしょう。どうしても専門用語がすっと頭に入ってこない時は, 略語集(17 ~ 18 頁)と用語解説(393 ~ 402 頁)をご活用下さい。補足資料B では, トレーニング・レベルごとに分類された練習メニューを65 種類以上紹介しています。これらはほんの手始めに過ぎません。本書を読み終えたら, まずはあなた自身の「パワー・プロフィール」と「疲労プロフィール」を作成してみて下さい。そうすれば, あなたはきっと自分にぴったり合った独自の練習メニューを作りたくなることでしょう。
本書は, 単なるトレーニングマニュアルではないので, ピークを調整する際のデリケートな感覚を説明したり, 運動生理学について事細かに説明したりはしません。そのような内容については既にすばらしい本がたくさん刊行されています。本書の目的は, あらゆるレベルのサイクリストに「パワー・メーターを使ってトレーニングやレースを行うことは大変ではない」ということを伝えることです。あなたは, パワー・データが何を意味するかを理解するのに, もう運動生理学者の指導を仰ぐ必要はありません。また, この最新の技術であるパワー・メーターがもたらしてくれるメリットを味わうためにエリート選手になる必要もありません。もしあなたが「もっと速く走れるようになりたい」と真剣に思っているのであれば, あなたがパワー・メーターをすでに持っていようと購入を検討しているだけであろうと, 本書はきっとあなたの役に立ちます。トレーニング内容を自分の頭でしっかり考え, ピーク調整方法の重要ポイントをきっちり理解すれば, すべてのアスリートが大きなメリットを享受できます。
略語集
AFPF 平均実効ペダル踏力
AT 無酸素作業閾値
ATL 短期トレーニング負荷
ATP アデノシン三リン酸
bpm 心拍数/ 分
C ケイデンス(ペダルの回転数)
Cat. Ⅰ , Cat. Ⅱ , etc. カテゴリーⅠ , カテゴリーⅡ等々
CdA サイクリストの空気抵抗
CPV 円周ペダル速度
Crr サイクリストの転がり抵抗
CTL 長期トレーニング負荷
CX シクロクロス
FTHR 機能的作業閾値心拍数
FTp 機能的作業閾値ペース
FTP 機能的作業閾値パワー
IF 強度係数
J ジュール・仕事量の単位
kj キロ・ジュール・仕事量の単位
LT 乳酸閾値
mph 1時間あたりの速度(マイル)
m/s 1 秒あたりの速度(メートル)
MAOD 最大累積酸素負債
MFQA マルチ・ファイル4 分割分析
MFRA マルチ・ファイル/ レンジ分析(複数ファイル/ 範囲分析)
MLSS 最大乳酸定常値
MMP 平均最大パワー
MTB マウンテン・バイク
NP 標準化パワー
OBLA 血中乳酸値上昇開始点(血中乳酸濃度が4mmol/L となる強度)
PCr クレアチンリン酸
PMC パフォーマンス・マネージャー・チャート(WKO+ の機能)
RM 最大反復回数
RPE 主観的運動強度
rTSS ランニング・トレーニング・ストレス・スコア
SX スーパークロス
TRIMP トレーニングの刺激
TSB トレーニング・ストレス・バランス
TSS トレーニング・ストレス・スコア
TT タイム・トライアル
VI 変動性指標
W/kg 体重1 キロ・グラムあたりのパワー(ワット)
W ワット
第1章パワー・トレーニングとは
最近サイクル・イベント, トライアスロンの大会, トラック競技場, 自転車ショップなどでにサイクリストやトライアスロン選手が集まった時に必ず話題になるのが「パワー」です。これは「もっと実力を伸ばすには, パワー・トレーニングがひじょうに有効だ」との共通認識がサイクリストの間に浸透してきたからでしょう。
私たちはコーチ兼運動生理学者という職業柄「パワー・トレーニングの効果の大きさ」を間近で観察してきました。あなたもパワーを活用すれば, トレーニングの質を一段階高いレベルに上げトレーニングの内容や計画を適切に調整できるようになります。パワー・メーターは, まず単純にあなたの体力の変化を客観的に数値で示してくれます。さらにあなたの苦手分野を明らかにし「今後どの部分を重点的にトレーニングすべきか」と「その内容」をはっきりと教えてくれます。これらは従来のトレーニング方法を見直すきっかけになるでしょう。
長年競技を続けていて「トレーニングやレースのことなんてもうすべてわかっている」と思っているベテランのロード選手でも, パワー・トレーニングを始めれば大きな効果が出ます。私たちは, かなりベテランの選手がパワー・トレーニングを始めたことでみるみる実力を伸ばした例を何度となく目撃してきました。具体例を挙げましょう。フィル・ホワイトマンは60 歳のサイクリストで, ロードレースの競技歴はもう30 年にもなります。これまでの経験から「パワー・メーターを使ったところで, そうパフォーマンスが改善するものでもなかろう」とたかをくくっていました。当然パワー・メーターの導入に乗り気ではありませんでした。それが実際に使ってみると, 彼のパフォーマンスはすばらしく改善したのです。「わしは今まで『これを使えばもっと速く走れます!』といううたい文句の機材を山のように試してきたけれど, どれもこれもダメだった。だからハンターに『パワー・メーターを試してくれ』と頼まれたとき『どうせこれもダメだろう』と思った。その後シーズンを通して使ってみた今だからいえるが, それは間違いだったよ。パワー・メーターのおかげで,自分が強化すべき特定のインターバルに集中してトレーニングできたし, 集団から逃げる時やタイム・トライアルの際のペーシングにとても役立った。それに何より最高だったのは, これまで30 年間のロードレース経験の中で, 初めて自分の進歩を実際の数字で確認できたことだね」
パワー・メーターを使うと想像以上に多くのデータが入手できます。それを活用するにはそのデータを使って「何をすべきか」を理解しておく必要があり, また「ソフトを使ってデータ分析する方法」を習得することが重要になります。最初は, ソフトに表示されるさまざまなグラフに思わずひるむかも知れません。そこで第6 章, 第7 章で「トレーニングに集中し, 体力アップをモニターするのに必要な情報の調べ方」を詳しく説明しました。また「パワー・トレーニングのメニューのやり方」や「トレーニングメニューをいつどのように変えればよいか」についても, 知っておいたほうがよいでしょう。「3」,「4」,「5」,「8」,「9」章では,「 あなたの目標達成に役立つ, 効率的なパワー・トレーニング方法」について解説しています。これらの簡単なステップを踏めば, パワー・メーターを使った効率的なトレーニング方法を簡単に習得できます。私たちはパワー・メーターを「高価なおもちゃ」から「本当に使えるツール」に変えるお手伝いをしたいと思っています。そして実際にパワー・メーターは, あなたの実力を伸ばすのに極めて有効なツールなのです。
次に, パワー・トレーニングを行うメリットについて説明しましょう。メリットはたくさんあるのですが, 大きく分けると以下の4つが挙げられます。
自分の体力を客観的に把握する
パワー・データのなかには, 重要で示唆に富むデータがたくさん含まれています。これらのデータから, あなた自身の得意分野や苦手分野を数字で客観的に把握できます。
協力し合う
コーチやチームメイトとパワー・トレーニングのデータを共有することで,より効率的に練習できます。
重点課題に集中して練習する
パワー・トレーニングのデータをもとに, 適切に目標を設定しその達成に向けて重点課題に集中してトレーニングができます。
自己ベストを更新する
質の高いデータをもとにしたコーチやチームメイトとの緊密な連携や, 重点課題に集中した質の高いトレーニングによって, あなたの体力は着実に向上するでしょう。
これら4つの要素は互いに密接に関連しています。ただ, まずは正確なデータがなくては, データの分析もコーチや仲間とのコミュニケーションもトレーニング計画もしょせんは「あてずっぽう」の域を出ないでしょう。ですから,パワー・データを集めることこそがすべての基礎になります。
ここであえて忠告するとすれば, 現在, 他のサイクル・コンピューターや心拍計を使っていない選手や「今の練習方法を変えたくない」と思っている選手は, パワー・メーターを導入するのは見合わせたほうがよいかも知れません。
というのもパワー・トレーニングを始めるには, 多少時間と努力を要するからです。加えてパソコンを使っての作業が発生し, 従来行ってきたトレーニング方法を修正する必要も出てくるでしょう。しかし「真剣にトレーニングに取り組んで, もっと速くなりたい!」と願うシリアス・レーサーにとって, パワー・メーターはその実力を伸ばす上で最高のツールになるでしょう。それではパワー・トレーニングを行うメリットについて, より詳しく説明していきましょう。
自分の体力を客観的に把握する
走行データの収集
パワー・メーターを使えば走行中に膨大な量のデータを記録し, 帰宅後パソコンにデータをダウンロードできます。文字通り1 秒ごとのあなたの走行記録が収集され「山岳コースでどの程度の強度で踏んでいたか」,「もっと補給食をとるべきだったのか」,「『50 マイル(約80km)の壁』に突き当たった時, 適切なギア比で走っていたのか」といったことを, あとで正確に検証することができます。
パワー・メーターは, 心拍数(循環器系)とワット(筋肉系)の両方を記録します。「ワット」は, どれだけの推進力を生み出したかを表します。「心拍数」はペダルにかけた“ 力”(Force)に対する体の反応であり, トレーニングが体に与えた影響を数値で示します。これらの数値を見れば, トレーニングやレースの全体像をよりよく理解できます。またトレーニング中にワットを基準とした各トレーニング・ゾーンの「どこで」,「どの程度の時間」練習したかをチェックできます。さらにあなたが重点的に練習しなくてはいけない部分だけを抜き出して結果を表示することができます。例えばインターバル・トレーニングの個別のインターバルや, 山岳, スプリント, レース中のアタックなどがその例です。それらのデータを検証すれば「トレーニング目標を達成できたのか」それとも「トレーニング方法を見直さなければならないか」を正確に判断できます。
心拍計との関係
心拍計は「心臓がどれだけ速く鼓動したか」とうことしが教えてくれないので心拍計だけを使ってトレーニングしていると, 自分の実力がどの程度伸びたのかを確認するのはやや難しいのが現状です。心拍数は実際のパフォーマンスにも影響されますが, 心拍計のみに頼っていると現在の体調や体力に対して事実誤認してしまったり, ミスリードしてしまったり, 最悪のケースでは自信喪失につながったりしてしまうリスクがあります。
心拍数には, 体内に蓄えられた水分量や気温, 体温, 前夜の睡眠時間, 仕事のストレスなど多くの要因が影響します。そのため練習やレース中は心拍数を見ないで「主観的運動強度」を参考にしたほうがよいケースもあります。心拍計はもう20 年以上も選手が使用してきた便利なツールであり, 実際に多くの選手の実力アップに貢献してきた実績がありますが「パワー・メーターが広く普及しつつある現在ではそれほど重要ではない」というのが私たちの結論です。
「心臓がどれだけ速く鼓動したか」というのは刺激に対する反応でしかなく,極論すれば「森ではちあわせした熊から必死で逃げている時」でも「仕事の重要なプレゼンの直前で猛烈に緊張している時」でも「レース終盤に逃げ集団の最後尾で必死にペダルを踏んでいる時」でも関係ないわけです。心拍数はいわば自動車のタコメーターのようなもので, アクセルを踏み込むと回転数が急激に上がるのと同じです。
パワー・メーターを使って, 心拍数に意味をもたせ, 体力アップにつなげる方法はあるのでしょうか?パワー・メーターは, あなたが「ペダルを踏んだ力」をパワーとして計測します。車に例えると「パワー」は60mph(96㎞ /h)で巡航する時にエンジンが出す「馬力の量」に相当します。あなたは「自転車を進めるためのエンジン」でパワー・メーターはあなたが出している力を「ワット」という数値で表します。心拍数とパワーの両方を見ながらトレーニングをしていると, 心拍数は「もっとゆっくり走れ」とサインを出しているのに, パワーは「体力アップするには強度が足りないぞ。もっと速く走れ」と逆のメッセージを出すことがあります。心臓は他の筋肉と同じく「筋肉」なので疲労します。例えば7 日間連続でハード・トレーニングを続けた場合, 前と同じワットを出しているのに心拍数がいつもより低くなることがあります。普段は280W を出すと心拍は165bpm であっても, 7 日間連続でハード・トレーニングをした後には158bpm に落ちるかも知れません。しかしこの場合は「まだトレーニングの効果が出はじめたばかりだ」ということが明らかなので, 必ずしも「その日はトレーニングすべきでない」ということにはなりません。このケースでは, 一連の練習を始めたばかりの元気だった時のように、同じかそれに近いワットを出せる可能性が高いと思われます。本当に休む必要があるかを判断するにはワット数が「鍵」になるでしょう。
体力の変化を見る
体力の変化を実際に目で見られることが, パワー・トレーニングの最大のメリットでしょう。これまでは「自分の体力がどの程度上がっているのか」を正確に知る手段はありませんでした。「今まで積み重ねてきたハード・トレーニングは本当に効果があったのか」,「本当に速くなっているのか」,「あの苦しいインターバル・トレーニングは『, 火曜晩のチーム練習の最後の丘で, 足が終わってしまわないようにする』ために役立つか」パワー・トレーニングはそういった疑問を解消してくれます。
パワー・メーターを使えば, 練習後データをパソコンにダウンロードし先週やそれ以前のデータと比較することで「体力がアップしているかどうか」,「どの程度向上しているのか」を簡単に確認できます。体力が徐々に上がってきていて1 か月前とくらべて強みや弱みに変化が現れている場合には, 今シーズンの計画に対する進捗状況もチェックできます。また乳酸閾値(LT)や無酸素運動容量が向上しているかも確認できます。そしてその最新のデータをもとに, トレーニング強度を適切なレベルに調整することができます。また過去のデータから, 一段階レベルアップするのでどれだけの日数がかかったのかを調べ, それを参考に今後の目標を再設定することもできるでしょう。オーバー・トレーニングを避けるために, 適切なタイミングで休息を取ることが大切ですが, これもパワー・メーターを使えばとても簡単に判断できます。トレーニング全体でかかったストレスを点数化した指標である「トレーニング・ストレス・スコア(TSS)」を使えば, 適切なトレーニング負荷を決めることができます。こういったことがパワー・メーターを使用するメリットです。
レースの分析
レースでパワー・メーターを使いレース後にそのデータを分析するのは, 客観的にレースを振り返る最高の方法です。データを解析すれば「そのコースで必要なパワーのレベル」や「もっと上位に食い込むにはどこを強化すればよいか」がわかります。実際, 普段のトレーニングよりもレースのほうが, 自己ベストのパワーが出ることがかなり多いのです。
そして逆説的に感じられるかも知れませんが, 完走できなかったレースからこそいちばん興味深いデータが得られます。サッカーの監督が, 試合をビデオで振り返って「同じ失敗を繰り返さないためには, どうすればよいか」を検討するように, パワー・データがあればレースを振り返り今後の対策を立てることができます。一例を挙げましょう。私がコーチしていた選手が, あるステージ・レースの山岳地帯の特にきつい区間で先頭集団から脱落してしまいました。レース後に, 先頭集団から脱落した局面と以前その選手が他のレースで先頭集団から脱落した際のデータを抜き出して選手と一緒に比較検証しました。そこでわかったのは, 彼が先頭集団から脱落した際いずれも「70rpm(回転/ 分)以下という低いケイデンスで乳酸閾値(LT)のワット数を5 分以上出していた」ということです。また, この選手はケイデンスが95rpm 以上であればLT もしくはそれを多少超えても, もっと長い時間耐えられるケースが多いことも確認できました。この結果を踏まえ, この選手は後輪のギアを23Tから27T に交換しました。それ以降, 彼は山岳のきつい局面でもケイデンス100 回転/ 分以上で回せるようになり, 結果として生理学的な観点からも今の体力で出せる最大のワットを出せるようになりました。そして彼は, それ以降すべてのレースで常に先頭集団に残ることができたのです。
レースのパワー・データを詳細に分析すれば, レースのどの局面でエネルギーを無駄に使ってしまったのかがわかります。「レースでペダルを無駄に踏みすぎること」は誰にでも十分に起こりえます。私たちが膨大なパワー・データを分析していく過程で「堅実に勝利を重ねる選手は, 集団の中で他のどの選手よりもペダルを踏んでいない」という特徴が浮かび上がってきました。ですが, これをどうやって実現すればよいのでしょう?最強のロード選手は, 集団の中にいて周りの動きをよく観察し, じっと待ち, そして風の抵抗を避け, エネルギーの節約に徹しているのです。こういった選手は, 集団の先頭を引くことはありません。勝利する選手は, 普段はまるで休んでいるかのようにペダリングをしませんが, いったんペダルを踏み始めると他の誰よりも激しく踏むのです。
レースでのパワー・データを活用すれば「どの時点で限界近くまでハードに踏んだか」,「 勝負を決定づける局面でもないのに, エネルギーを浪費してなかったか」といったこともチェックできます。「戦術的なミスを犯していたのに, 本人は自覚していない」ということは往々にして起こりえます。データを分析すれば, 頭の中でレースを再現しながら「決定的な逃げに乗るために何が足りなかったのか」をきっちり理解できるでしょう。これらの情報を使えば,より重点課題に集中して練習ができるようになります。
自分の得意分野と苦手分野を明らかにする
簡単なテストやレース, そしてトレーニングのパワー・データを分析すれば,各選手特有の得意分野や苦手分野がわかります。パワー・メーターが普及する前は, 自分の得意分野や苦手分野を「何となく推測する」ほかなく, しかも悪いことにその推測は「的外れ」なことが多々ありました。パワー・メーターを使えば「今使っているギアは適正か」,「もっと筋力アップしないといけないのか」を判断できるようになります。
自分の苦手分野を知るというのは誰にとってもあまり楽しくないものです。5 分のベスト・パワーが, トップ・レーサー並みでも20 分のベスト・パワーが低レベルであれば, トラック競技では問題なくてもロードレースに出場するならば死に物狂いで努力しなければならないでしょう。しかしそもそも自分の苦手分野がわかっていないのであれば, 改善のしようもありません。選手はそれぞれ持っている素質・体力が異なりますし, 目指すところも違います。ただ自分の得意分野と苦手分野を知っているのといないのとでは, 必要なトレーニングに集中して取り組む上で大きな違いがあります。LT の105%で3 分以上走らないといけない場合, 体にはどんな反応が起こるでしょうか?肺が猛烈に苦しくなるでしょうか?それとも楽にこなせるでしょうか?パワー・メーターがあれば, 今の体力やトレーニング内容を分析し, 選手の素質を見極め, どこを強化しないといけないかをはっきりさせることができます。
協力し合う
コーチとのコミュニケーションをスムーズにする
ほとんどのコーチは「パワー・データのような情報は大歓迎だ」といいます。一度パワー・メーターを試したコーチが以前のパワー・メーターなしの練習方法に戻ることはまずありません。パワー・データは単純明快で, コンピューターの画面上には, ありのままの客観的な事実が示されます。コーチが選手にパワー・メーターを使用するよう強く薦める理由はそこにあります。パワー・メーターを使うことで, 選手とコーチの距離はぐっと縮まるのです。
あるコーチはこういいます。「練習メニューに対して体がどう反応したかが, 選手とコーチがコミュニケーションを取る上でいちばん大事なポイントです。パワー・トレーニングでは, その『練習メニュー』と『反応』の関係を分析して次に活かすことができます。パワー・メーターを使えば, 選手に練習メニューを指示する時にもはっきりとした数字で伝えることができます。またその練習メニューに対して選手が『どう取り組んだか』,『どう反応したか』もパワー・データを見れば簡単に検証できます。これはトレーニング計画と照らし合わせてチェックするのにとても役立ちます。トレーニング計画の進捗状況について突っ込んだ議論をした上で評価ができますし, そうすることでもっと正確に分析できます。また『, 過去のトレーニングデータの推移から見て, きっと目標を達成できる』という確信を持つことだってできます。こういった意味で, パワー・トレーニングはひじょうに大きな効果があります」
コーチは, パワー・データをもとに選手の長所と短所を探し出し指摘できます。これは, たとえコーチが選手と一緒にレースに出場したとしても, なかなかできないレベルのことです。コーチは, パワー・データからすばやく選手の現時点での体力を把握し, トレーニング計画に微調整を加えることもできます。
パワー・メーターを使う最大のメリットの1つは, コーチと選手のコミュニケーションが密になることです。パワー・データを見れば, 選手の体力や最近のトレーニング状況を正確に把握できます。「トレーニング計画に対して, 現状どの辺りまで来ているか」や「練習計画を予定通りこなせているか」といったことが確認できるのです。コーチは, 選手がトレーニングやレース中に何をしていたかをすばやく読み取り, さらなる体力アップのために的確なアドバイスができます。
一方で, パワー・メーターを使うと, コーチに対する選手の説明責任は増します。コーチは, 選手からパワー・データをメールで受け取り中身を見れば,指示したメニューの半分程度しかやっていないことにたちまち気づくでしょう。選手にとって, これが, パワー・メーターを持ちたがらない理由となりえます。パワー・メーターをつけていると, 選手は毎回コーチを乗せて自転車に乗っているようなものなのです。パワー・データは, ウソをつきませんし時には見たくない現実を明らかにしてしまいます。
しかし, パワー・メーターを使い始めたばかりのサム・クリーグは「コーチに説明責任があったことが結果的に役立った」といっています。サムは, パワー・トレーニングを開始して2 シーズン目にあるコーチに師事しました。
「パワー・トレーニングとコーチへの説明責任が組み合わさったおかげで,重点課題に集中して練習できたし,『 トレーニングが結果につながるかのテスト』をレースですることができたんだ。シーズン前のトレーニングでは, 今後の練習計画をメールで受け取るたびに『 こんなのできっこない』と思ったよ。
『もしできなかったら, コーチにメールでパワー・データを送る時に, 精一杯がんばったけどできなかったことを知らせないといけないな』ともね。でもたいていは逆だった。次のインターバルが来るたびに, 僕はちゃんとペダルを踏むことができたんだ。『このインターバル全部はとてもできない』と思っていても, 実際にできなかった回数は意外と少なかったね」
「ある練習は, 特によく覚えているよ。そのメニューは, 50 分間ケイデンスをいろいろ変えながらLT レベルでトレーニングするという内容だったんだけど, 自分では『20 分はできても50 分はとても無理だな』と思っていたんだ。実際に始めてみると苦しくて, そういう時は時間がゆっくり流れるんだよね。
でも, この練習結果のデータをコーチに送らないといけないとわかっていたから, 少しでも長く指定されたワットを維持するように頑張ったんだ。練習中『あと1 分だけでも続けるのは無理だ』何度もそう思ったけど, 表示されているパワーと心拍数は安定していたんで, 何とかペダルを踏み続けたんだ。そして50 分後, 僕は練習を終えていた。この時50 分のピークパワーを更新し, それ以前の3 か月間の練習すべてよりも, このたった1 回の練習で精神的に成長することができたんだ」
「この精神面と肉体面の強さは, シーズンを通してレースでも通用したよ。シーズン初期のあるレースで, 序盤で絞り込みをかけたんだけど20 分後に横風で集団がハシゴ状になった時にちぎれてしまったんだ。この時は自分で自分を蹴飛ばしてやりたかったよ。とりあえず『平静にならないと』と自分にいい聞かせ, 落ち着いたところでもう一度レースの組み立てを考えたんだ。『これからこのレースの目標は30 分のLT でのタイム・トライアルだ』と決めた時は自分でも『気がふれたのか』とも思えたけど『自分は手強いパワー・データとレースしているのであって他の選手と競っているんじゃない』って思えたんだ。それからの30 分は, 冬場のトレーニングのようにパワー・メーターと格闘したんだ」そしてその結果, サムは逃げ集団に追いつき最終的に先頭でゴールに飛び込んだのです。「もしあのメール(50 分の練習をやり切った経験)がなければ, きっと諦めてしまっていただろうね」彼はシーズンの残りのレースでも, 身につけた粘り強さを存分に発揮しました。「それ以降のレースでの順位は, 練習の時に出ていたパワーから予想した着順よりもずっとよかったんだ」,「あの優勝したレースの日, 僕は弱い自分に勝てたし, その年で最強だった日と張り合っていたんだ。しかし『最悪だ…』と思っていた日が『最高の日』になったのはいい気分だね」
チームメイトと高め合うパワー・メーターを使えば, チームで練習することとがいかにすばらしいかに気づき衝撃を受けるかも知れません。またチーム内では「誰がエースになるべきか」はいつもはっきりしているわけではなく「誰が最高の走りをできるか」を見極めるのはかなり難しいですが, チームメイト全員がパワー・メーターを装着し定期的にテストをしていれば, コーチも選手も誰がエースになり誰がアシストになるべきかを正確に判断できます。
レース中トップ・レベルの選手を観察していると, 集団のどこにいればエネルギーを節約できるかがわかります。エースは, パワー・メーターをつけてレースに出れば, 山岳で先頭集団についていくには何ワットが必要かを確認できるでしょう。もしパワー・データが「チームメイトは, 優勝できるだけの体力がある」とデータで示してくれたなら, みな自信を持ってレースに臨めるでしょう。もしチームの5 人中3 人が, パワー・データのグラフ通りの実力を発揮できれば, そのチームは優勝の可能性が十分あります。
重点課題に集中して練習する
厳しいトレーニングに取り組むモチベーションを得る
モチベーションを上げるのに, パワー・メーターはたいへん有効です。例えば5 分の練習メニューを行う時に最後に平均出力がジリジリと落ちてきたとしても, 目標のワットを達成するために頑張ろうとするでしょう。目標が現実的に設定されていれば「まだ達成できる」ともう一頑張りできるものです。体がもうほぼ限界まできていたとしても, パワー・メーターの示す数字があとほんの少し奮起を促してくれるのです。スポーツの世界では, タイヤの幅ほどのごくわずかな差, あとほんの少しの頑張りが, ひじょうに大きな差となります。
選手なら誰でも, 根拠のない憶測に惑わされて回り道したり時間を浪費したりするのは避けたいものです。今日ではほとんどの選手がひじょうに忙しい日常に追い立てられているので, 貴重な練習時間をなるべく効率的に使わなければなりません。もし時間にかなりの制約があるのであれば, パワー・メーターを使うことで無駄に距離を乗り込むことなく貴重な時間を節約しながら, 体力アップを図れます。
ポジションを直し空気抵抗を減らす
同じワットで走行するのであれば, ポジションがスピードの最大の決定要因になります。あなたも空力的に不利で格好の悪いポジションを直して, もっと速く走れるポジションを見つけたほうがよいかも知れません。パワー・メーターを使った簡単なテストをするだけで「 今のポジションが, どの程度スピードに影響しているか」や「どんなポジションを取れば空気抵抗を最小化し最大のパワーを出せるか」を調べられます。最新の自転車フレームやホイール, 選手のポジションについて, 風洞実験室での研究では「 ポジションと機材を変更すれば, 同じスピードを出すのに30W 少ないパワーで済む」という結果が出ています。いいかえれば, ポジションと機材を変えるだけで, 選手は30W ものパワーを得られるのです。これはかなり重要な事実で, 年間トレーニングの中で考えても選手にとって最高にメリットがあるといえます。
ペーシング
屋外でトレーニングしている時でも, レースの最中でも, 郊外をただのんびりと走っている時でも, パワー・メーターは目標達成に向けて最適なペースで走るのに役立ちます。単にその日の練習を走り切るためでも, 特定の負荷で体に狙い通りの生理的刺激を加えて走るためでも, パワー・メーターを使ってペーシングをすれば, エネルギーを抑えるべき時は抑え, 使うべき時は使えるようになります。
パワー・メーターは, 耐久レースのようなロング・ライドや, インターバル・トレーニング, 峠やタイム・トライアル, いずれでも使えます。一度FTP(詳細は第3 章に記載)を確認すれば, タイム・トライアルでもヒル・クライムでも, その値を維持して自分の限界ギリギリで走り続けられるようになります。この中でも特に有効なのが, タイム・トライアルでのペーシングに使うことです。パワー・メーターを使えば, レース開始直後の5 分に踏みすぎてしまうことなく, 無理のないペースで走れます。レース中にワットを確認するのは,ゴールまで一生懸命にこぎ続けるために自分の目の前に「ニンジン」をぶらさげるようなもので, そうすることで自分の限界ギリギリのところまで力を出し切るよう集中できるでしょう。集団スタートのレースでも, 自分のペースを守るのは重要です。パワー・メーターを活用すれば, レース終盤まで足を残し,
アタックする際のペースが適当か判断し, レースに勝つために何をすべきかを明らかにできます。
トライアスロンの強豪選手であるランディー・ウェイトラウブのケースを紹介しましょう。ランディーは, 自宅の近くに山や丘がないので平地で練習するしかありませんでした。彼の目標は, プレシード湖・アイアンマン・レースを10 時間以内に完走することでした。このレースはアイアンマン・レースの中でも最難関コースの1つで, バイクのコースは約3㎞の上りを含む起伏の多いレイアウトです。ランディーはまず「いくつ上りがあるのか」,「それぞれの上りの長さはどのくらいか」を調べてから, 地元のニューヨーク・ロングアイランドでレースを想定した練習に取り組むことにしました。
ランディーは, レースでの目標のワット数にほぼ近い数字でプレシード湖畔を含む全コースを試走し, パワー・データを収集しました。試走後, 彼はまず目標としていたワットが適正だったのかを検証しました。このコースを走るのは初めてだったので, 目標とするパワーを維持したまま180㎞に及ぶこの厳しいコースをバイクで走り切り, その後42.195㎞のマラソンを完走できるだけの足を残せるかどうか自信がありませんでした。しかし, 試走後データを検証すると, 見事に目標ワットを出せていたことが確認できました。バイク試走後の疲れ具合から推測すると, その後のマラソンも十分に走れるだけの体力が残っていると思われました。彼はそれから紙と鉛筆を取り出し2 分程度でコース全体の上りの数を数えました。この情報をもとに, 自宅周辺でレース・コースに極力似たトレーニング・コースを探しました。坂の長さが足りない場合は, 向かい風に向かって走りました。また, レースで最高のパフォーマンスを出すために必要なワット数を目標に設定し, インドア・トレーナーで坂を繰り返し上るのを想定したトレーニングメニューを組んだのです。
モバイル研究所として活用する
パワー・メーターを使って, 毎月自分の体力をテストできます。このテストによって「自分の体力がどの程度伸びたか」,「まだ苦手なところはどこか」について数値で確認できます。かつては専門の施設で高額な費用を払わなければできなったこのようなテストが, いまは自転車に装着してあるちっぽけなパワー・メーターで気軽に行えるのです。
パワー・メーターは, あなたの体力の変化を正確に測定・記録してくれます。「どのくらい循環器系を酷使したか」だけでなく「ペダルにどれだけの力を加えたか」も計測してくれます。定期的にテストをして体力をチェックすれば, 自分の「のびしろ」を確認でき, オーバー・トレーニングを回避できます。体力の変化の仕方は人によって千差万別です。ある選手は, 他の選手が多大な労力や努力を費やすところを少し努力するだけで急激に体力を伸ばすといったことも実際にあります。また, 適度な間隔を置いて定期的にテストを行えば「どの生理システムが強化されたか」,「現在集中して取り組んでいるトレーニングの時間設定は適正か」を判断できます。
著者のコーガン博士が指導している選手にたびたびいい聞かせるのは「トレーニングはテストであり, テストはトレーニングだ。トレーニングする時はいつも自分の全力を出し切りなさい」ということです。
インドア・トレーナーを活用する
パワー・メーターを使えば, インドア・トレーナーを最高に活用できます。パワー・メーターをつけて, 屋外を走ればすぐに「ワットはひじょうに激しく変化する」ことに気づくでしょう。ワットは, 周囲の状況に応じて時々刻々とかなり激しく変動します。これは時と場合によっては, 効果的なトレーニングとはいえません。インドア・トレーナーを使えば, アップダウンや犬などの外部要因の影響が全くない状態で, 体力アップのために最適なパワーとインターバルだけに集中してトレーニングできます。
加えて屋外でのトレーニング強度と比較してみると「インドア・トレーナーがいかに効率的か」がわかります。また新しい目標を設定して, 練習メニューに取り組むに際にも, インドア・トレーナーを存分に活用できます。最新のインドア・トレーナーは, 高度な電子制御技術により屋外で実走した際のパワー・データをダウンロードし, そのコースをインドア・トレーナー上で再現することができるのです。インドア・トレーナーを使ってトレーニングした時のパワー・データは, 道路状況やチームメイトの影響などで変化が激しくなる屋外での走行と比べて, かなり「きれい」です。ペダリングのムラによる変動を消してしまえば, 練習結果をより簡単に分析できます。
補給食の量を決める
自転車で走行中は, 運動強度や時間に応じて着実にエネルギーを消費します。走行中にどの程度の仕事量(単位:kj, キロ・ジュール)をこなしたかが重要で, もし仕事量がわかれば, カロリー消費量(単位:kcal, キロ・カロリー)もわかります(通常は, ほぼ同数値になります)。これがわかれば, もっとカロリーを消費しないといけないのか, 逆にもっとカロリーを取らないといけないのかがわかります。
体力の消耗を避けようとすると, ワットは劇的に下がります。それとは逆に強度の高い練習やレースでは, 頻繁にかつ十分に補給食を食べ適切なカロリーを摂取することがひじょうに重要になります。走行時のカロリー消費量がわかれば, 練習後にどれだけカロリーを摂取すればよいかを厳密に計算できます。そうすれば, ハード・トレーニングが続く期間でも, エネルギーの摂取量と消費量のバランスを保ち, 理想的な体重を維持できるでしょう。
グリコーゲンを再充填しさらに多くの筋グリコーゲンを貯蔵できるよう食事すれば, 速やかに疲労から回復し次のハード・トレーニングに備えられます。
サミー・スロアーの例を見てみましょう。彼はホビーレーサーで, 所属する地元クラブのロング・ライドに参加してきました。しかしサミーは, 練習のたびにハンガーノックになり, コンビニに寄らなければいけませんでした。また,このダメージがその後2 日間残り, 練習の質がその間低下してしまっていました。そこで彼のコーチのハンターは, 2つの練習データから走行中の運動量をkj で正確に調べ, それから走行ルートをいくつかに区切り, 各区間での運動量を書き出しました。これによりサミーは各区間で摂取すべきカロリーを確認でき「いつどれだけ食べたらよいか」,「どのタイミングでスポーツドリンクを飲めばよいか」がわかりました。この情報をもとにハンターは, サミーが最速で回復するのに必要な炭水化物・タンパク質・脂質の摂取量を調べ, 練習後の回復計画を作成しました。その結サミーはハンガーノックに陥ることがなくなり, 翌日以降も質の高いトレーニングができるようになったのです。
kj(キロ・ジュール)の意味
ほぼすべてのパワー・メーターが, ワットを測定・記録するのはもちろん, 運動量をジュールで表示してくれます。ジュール(j)もしくはキロ・ジュール(kj)は, エネルギーの消費量やどれだけの運動量があったかを示すものですが, 通常アメリカでは(日本でも)カロリー(cal)もしくはキロカロリー(kcal)で表します(1kcal=1,000cal)。
定義上, 1kcal は4.184kj です。よって一見したところ消費カロリーを正確に計算するにはkj を4.184 で割る必要があると思えますが, それは誤りです。というのもパワー・メーターは, 外部に出力された結果だけを測定しており, その仕事量をこなすのに必要だったエネルギー全量を表してはいないからです。走行中に消費しているエネルギーの大部分は, じつは「熱」として周囲に発散されており, ある意味「浪費されている」のです。そして残りのわずか一部分のエネルギーだけがペダルを回すのに使われています。運動量とエネルギー消費量の関係は, 選手ごとの走行中の熱効率のよしあし(平たくいえば食べたものをエネルギーに変換する能力)に左右されます。この熱効率は, もっとも鍛え抜かれた選手でさえ, 20 ~ 25%に過ぎません。
というわけで, パワー・データをもとに, 実際のエネルギーの消費量をカロリーもしくはキロ・カロリーで推定するには, まずキロで表された仕事量を4.184 で割り, その後4(熱効率が25%の場合)もしくは5(熱効率が20%の場合)を掛ければよいのです。この数式の結果, それぞれの数字がほぼお互いを打ち消し合うので, 仕事量(kj)と消費カロリー量(kcal)はほぼ同じになります。厳密にいえばkj とkcal の関係は1:1 ではありませんが, 実際に各選手の熱効率性を正確に把握しようとすると専門の施設で測定する必要があり
トレーニング負荷や周囲の状況にも大きく左右されるので, この推計方法で特に問題はありません。
自己ベストを更新する
パワー・メーターを使用するメリットは「体力アップに役立つ意味ある情報を得られる」,「コーチやチームメイトとのコミュニケーションが円滑になる」,「重点課題に集中して練習できる」といったことですが、これらが組み合わされば, 自己ベストの更新や目標達成はそれほど難しくはありません。
実際トップ選手でもここ最近の成績は, パワー・トレーニングに負うところが大きいのです。ツール・ド・フランスからアワー・レコードまで, トラック競技での新記録, 人力で動く乗り物(HPV:Human-Powered Vehicle)の記録,マウンテン・バイクやBMX のレースなど, あらゆるレース中の厳しい局面で生理学的見地から必要とされるパワー水準を調べられるだけでなく「選手が現時点でどの程度の体力があり, ライバルたちに立ち向かうにはどうすればよいか」まで調査・分析できるのです。少し前までは, 科学的トレーニング・ツールやコンピューターを駆使してトレーニングを管理できるのは, 巨額の予算でサポートされている一握りのトップ選手だけの特権でした。しかし現在では,ほとんどのシリアス・レーサーが, かつてのトップ・プロ同様にデータを自由自在に使いこなし, ひじょうに高い精度で練習できるのです。
パワー・トレーニングは, 結果がはっきりわかります。ただ単にパワー・メーターをつけてトレーニングするだけでは, 残念ながら成果は出ないでしょう。パワー・メーターは, 有効に使わなければなりません。もしお金を払うだけで速くなりたいと思っているのなら高価な空力に優れたディープ・リム・ホイールを購入するか, もっと軽いカーボン製フレームを買ったほうがよいでしょう。しかし, それらを使っても「もっと速く走るにはもっと強くペダルを踏まなくてはならない時」がいずれやってきます。パワー・メーター は「それを使って練習する意思」があってこそ, 初めて真価を発揮するのです。
トレーニングから得られる情報が限られていれば, 体力アップの可能性は限られてしまい, 最終的に選手としての成功の度合も限定されてしまうでしょう。最初は, パワー・メーターを使うことにためらいがあるかも知れませんが,実際に使ってみれば比較的すぐ慣れて, 今までよりもっと効果的に練習できるようになるでしょう。もし現在の走り方やトレーニング方法に改善の余地があれば, まずはそれらを変えていく意思を持たなくてはなりません。本書は, あなたが「 トレーニングやレースに対する考え方を変える方法」と「目標を達成するために何をしなければならないか」をはっきり理解できるよう手助けすることを目的としています。
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