サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.8 一流選手の資質:「能力」自分のポテンシャルを知るには・身体的変化の個人差

【立ち読み版】2012年8月20日 08:57

一流選手の資質:「能力」(続き)

■自分のポテンシャルを知るには

では、対象のスポーツに求められる生まれつきの身体能力が自分にどの程度あるかや、最大の潜在能力にどれくらい近づいているかを知るためには、どうすればよいのでしょうか。

はっきりとした答えを出しにくい問題ですが、もっとも効果だと思われるのは、過去のトレーニング内容と試合結果を比較することです。たいしたトレーニングしかしていないのに試合で良い結果を出せたのであれば、潜在能力が高いと考えられます。逆に、十分なトレーニングをしたにもかかわらず試合の結果が振るわなかったのであれば、潜在能力が低いのかもしれません。ただし、必ずしもそうだとは言いきれません。

■競技歴が3年未満の場合、「試合結果」は「能力」や「ポテンシャル」を正確に反映しない場合がある

競技歴が浅く、レース経験が3年未満の選手の試合結果には、現時点での能力やポテンシャルが正確に反映されていない場合があるからです。競技を始めてから3年間は、細胞レベルで多くの変化が生じます。この変化は、次第に選手の能力を明らかにしていきます。そのため、経験の浅い選手が良い成績を収めていたとしても、その後もずっとそれを維持できるとは限りません。他の初心者に次第に追いつかれ、追い越されていくこともあるのです。その主な理由は、トレーニングへの反応が個人によって異なるためです。

■身体的変化の個人差

トレーニングによって生じる身体的変化には、個人差があります。反応が早い人は、体力を短期間で向上させることができます。理由ははっきりとわかっていませんが、これらの人々の細胞は早く変化に対応できるのです。一方、同じレベルの体力に達するまでに、人よりも長い時間がかかる人もいます。数年かかる場合も珍しくありません。反応が遅い人の問題は、トレーニングの成果が現れる前に、競技を諦めてしまう場合があることです。以下にこの反応の曲線の例を示します。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。