サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.11 一流選手の資質:「機会」
一流選手の資質:「機会」
■才能があっても能力を開花させる機会がないケースもありえる
サイクリストとしての潜在能力が世界一高い人が、太り過ぎで運動不足の喫煙者であることは十分に考えられます。今、世界のどこかでソファに身を沈めてテレビを見ている誰かが、自転車競技の史上最高の世界チャンピオンになる才能を持っているかもしれないのです。
彼は生まれつき、自転車競技で成功するために必要な優れた有酸素能力やその他の身体的素質があったのかもしれません。その能力を開花させたいという気持ちを抱いたことはあったかもしれませんが、残念ながらそれを実現する機会に恵まれなかったのです。
貧しい家庭に生まれ、家族を養うために幼いころから働かなくてはならなかったのかもしれませんし、紛争地帯に住んでいるために、生き延びることに必死で、スポーツどころではないのかもしれません。自転車には興味を引かれず、サッカーやピアノを選んだのかもしれません。いずれにせよ、私たちにはそれを知る由はありません。
■欠けていると「潜在能力の発揮の妨げ」になりえる環境要因
サイクリストとしての成功の可能性を妨げるものは、機会に恵まれないことだけではありません。次の項目で欠けているものがあれば、それは潜在能力を十分に発揮する妨げになっている可能性があります。
- 練習に適したコース
- 地形の多様性(平地や坂)
- 十分な栄養
- 適切な自転車・機材
- コーチの指導
- トレーニング・パートナー
- ウエイト・トレーニングの施設・器具
- 練習時間
- 参加できるレース
- ストレスの少ない環境
- 家族や友人の支え
■目標に向けて、ライフスタイルや環境を変えていく
これらはごく一部です。様々な環境的要因が整ってこそ、競技で持てる能力を発揮できるようになるのです。良い成績を収めたいと望むほど、障害を乗り越えやすくなります。「もっと速くもっと強いサイクリストになる」という目標に向けて、ライフスタイルや環境を変えていくようになるのです。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。