サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.49 「トレーニング十則」 九、身体の声を聞く(2)東ドイツがオリンピックで大量のメダルを獲得した本当の理由
「トレーニング十則」 九、身体の声を聞く(2)
■旧東ドイツのスポーツ研究所の前所長による講演会
これは私の個人的な体験だけに基づいたものではありません。
1990年代初頭、ベルリンの壁が崩壊したあと、私は旧東ドイツのスポーツ研究所の前所長による講演会に出席しました。
彼はまず、東ドイツのアスリートが違法薬物を実際に使用していたことを認めました。ただし、それは東ドイツの選手に輝かしい成功をもたらした理由の一部に過ぎないとも述べました。
■東ドイツがオリンピックで大量のメダルを獲得した本当の理由
彼によれば、東ドイツがオリンピックで大量のメダルを獲得した本当の理由は、エリート選手が寄宿舎で高度に管理された生活をしていたことです。
毎朝、選手は、コーチや生理学者、医師や看護師、スポーツ心理学者などの専門家と話し合いをします。専門家は選手の体調をチェックし、必要に応じてその日のトレーニングメニューを調整しました。
専門家は選手の身体の声を聞いていたのです。選手はその日に身体が耐えられる量のトレーニングしかしませんでした。決して無理はしなかったのです。
■自分の身体の声に耳を澄ますことで、練習の質をよくする
このような恵まれた環境にいない私たちは、自分で身体の声を聞くしかありません。身体の声に耳を澄ませば、効率的なトレーニングを行いやすくなり、パフォーマンスも上がります。質のよいトレーニングは、厳しいだけのトレーニングに優ります。
本書では、日々身体の声を聞き、賢くトレーニングする方法を紹介します。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。