サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.50 「トレーニング十則」 九、身体の声を聞く(3)楽しむことを忘れない
「トレーニング十則」 「トレーニング十則」 九、身体の声を聞く(3)
■数字にこだわり過ぎると楽しみが失われる
もう1つ、重要な点があります。私が指導する選手は、とても真剣に競技に取り組み、厳しい練習を行っていますが、私は楽しむことの大切さを選手に感じてもらうことを忘れないようにしています。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、選手の中には数字を達成することにばかりにこだわり、自転車に乗り始めた頃の気持ちを忘れてしまう人もいます。数字にしか興味が持てなくなると、自転車に乗る楽しみが失われてしまいます。
■プロのコメント
私の知るプロの選手の多くは、ホビー・レーサーが忙しい毎日のなかでトレーニング時間を捻出していることに感嘆しています。
ホビー・レーサーは、週に50~60時間働き、子供をサッカーの練習に連れて行ったり、庭の芝を刈ったり、ボランティアの仕事をしたりと多忙な日々を送りながら、トレーニングをしているのです。
それに比べ、プロ選手はなんと恵まれているのでしょう。練習時間は週に30~40時間もあり、昼寝もできます。
しかしプロ選手も「サイクリングが楽しみでなくなったら、プロ生活を止めて地に足のついた仕事に就くだろう」と言います。
■楽しむことを忘れない
私たちはみな、楽しむためにサイクリングをします。おそらく、読者の皆さんのほとんども、自転車を仕事にはしていないでしょう。楽しむために自転車に乗っていることを、忘れないようにしましょう。
あなたの価値は、レースの結果で決まるのではありません。レースの結果が悪くても、子供たちのみなさんへの愛情は変わらないでしょう。陽はまた昇ります。眉間にしわを寄せず、笑顔で競技を楽しみましょう。心を弾ませれば、パフォーマンスもよくなります。それがサイクリングというスポーツなのです。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。