サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.55 トレーニングの科学(1)「持久力」と「最大パワー出力」は同時に高めていくことはできない

【立ち読み版】2012年12月5日 06:30

トレーニングの科学(1)

■1980年代に格段に進歩したスポーツ科学

トレーニングについて、科学的な研究が本格的に開始されたのは1960年代で、トップレベルのサイクリストのトレーニング方法が大きく変わり始めたのは、1970年代以降です。そして1980年代、スポーツ科学は格段の進歩を遂げました。その10年間に、アスリートについて、それ以前の80年間でわかったこと以上の知識が得られたのです。

初期の科学は、実験室での研究によってではなく、トップアスリートの練習方法を対象とした研究から、多くの新事実を明らかにしていきました。今日でも、この手法は続いており、「成功するアスリートとそうでないアスリートの違いが何か」を探究する、白衣の研究者がいます。

■「持久力」と「最大パワー出力」は同時に高めていくことはできない

自転車競技が始まってまもない時代、すでにサイクリストは、「持久力を最大限まで高めていくこと」と「最大パワー出力を高めていくこと」は同時にできないことを経験によって知っていました。

コーチと選手は、まず有酸素系の持久力の基礎を作り上げ、次に速いスピードで走りこむことで、適切なタイミングで身体を最高の状態に仕上げることができることに気づきました。

このトレーニング方法は、一年を通して、気候条件に合わせた形で行われるようになりました。冬場は楽なペースで長距離を乗り込み、夏場は速いスピードで走りこむ練習方法が、多く取り入れられるようになったのです。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。