サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.60 生理学と身体能力 乳酸閾値(LT:Lactate Threshold)(1)
生理学と身体能力 乳酸閾値(LT:Lactate Threshold)(1)
■持久的パフォーマンスの予測材料としてのLT
有酸素運動能力は、持久力的パフォーマンスの良い予測材料ではありません。
たとえば、同じレースカテゴリーの選手全員の有酸素運動能力を測っても、VO2maxの値とレース結果に関連性が見出されるとは限りません。数値が高ければ上位に食い込めるわけではないのです。
しかし長時間維持できる値のVO2maxに対する割合はレース能力のよい予測材料になります。この長時間維持できる値にはLTが反映しています。
■LTはレースの勝敗に影響を与える場合がある
LTは「無酸素閾値(AT:Anaerobic Threshold)」とも呼ばれます。
これは、すべてのサイクリスト、特に短距離でスピードの速いレースの選手にとってはとても重要な運動強度です。「LT前後のきつい状態でどれだけ長くハードに走行できる能力があるか」が、白熱したレースで誰が優勝するかを決定づける場合があります。
LTを用いると、運動強度を測れます。LTを超えると乳酸塩と水素イオンが急速に血液中に蓄積し始めます。「LTを超えると体内に酸が蓄積する」という特徴があるので、実験室や病院でかんたんに測定できます。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。