サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.61 生理学と身体能力 乳酸閾値(LT:Lactate Threshold)(2)

【立ち読み版】2012年12月13日 06:30

生理学と身体能力 乳酸閾値(LT:Lactate Threshold)(2)

■LTで起こる変化

LTに達すると、代謝が急速に変化します。

酸素を用いた脂質の燃焼ではなく、グリコーゲン(筋肉に蓄積された糖質)をエネルギー源にするようになるのです。

乳酸閾値はVO2maxに対する割合(%)で表わされ、LTが高いほど、アスリートはレースなどで長時間にわたって高速走行が可能になります。血中乳酸濃度が高くなると、乳酸を体外から除去するために必然的に身体の動きが鈍くなります。

■LTとVO2maxの関係

運動習慣のない人のLTはVO2maxの40~50%です。定期的にトレーニングをしているアスリートは、VO2maxの80~90%にもなります。

つまり、VO2maxが同じ二人の選手を比較した場合、A選手のLTがVO2maxの90%、B選手が80%であれば、A選手の方が平均速度を高く維持でき、持久力勝負の競り合いでは生理学的にひじょうに有利だといえます(もちろんB選手がうまく風をよけ、最後にすばらしいスプリントをすれば話は別です)。

■LTはトレーニングでかなり上げることができる

有酸素運動能力と違い、LTはトレーニングによってかなり上げることができます。本書でも、LTを高めるためのトレーニングを多数紹介します。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。