サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.73 疲労の原因 乳酸の蓄積
乳酸の蓄積
■乳酸はグリコーゲンが分解されるときに発生する
ペダルを漕ぐ力のエネルギー源となるものは主に脂質と糖質の2つです。
体内に保存された糖質は、「グリコーゲン」と呼ばれます。グリコーゲンが分解されてエネルギーに変換されると、筋肉細胞で乳酸が生成されます。乳酸は、細胞から周辺の体液に滲み出し、血液に流入します。細胞から乳酸が滲み出すときに水素イオンが放出されます。
血中の乳酸値が高くなると筋肉細胞の収縮力が弱まり、ライダーの動きが緩慢になります。
■運動強度が上がると血中の乳酸値も上昇する
人間のあらゆる動作(この本を読むというごく軽い動作も含め)には脂質と糖質がエネルギーとして使われるため、乳酸は常に血中に存在します。しかし、運動中はグリコーゲンの消費が増大するため、血中の乳酸値もそれに合わせて上昇します。
■乳酸除去能力を超えると乳酸が蓄積し疲労する
乳酸値が低ければ、乳酸は問題なく除去・緩衝されます。
しかし運動強度が有酸素運動(軽い呼吸)から無酸素運動(荒い呼吸)になると、乳酸値が大幅に上昇し、除去が生成に追いつかなくなります。その結果、乳酸が蓄積し短期的な疲労が生じます。
この疲労に対処するには、運動強度を下げて乳酸の生成を抑え、除去が追いつくようにするしかありません。
■乳酸の除去・緩衝能力向上にはインターバル・トレーニングが効果的
このような疲労は、ロングスプリント・逃げ集団の追走・上りなどで短時間・高強度のインターバルがかかった時に起こります。
乳酸の除去や緩衝能力の高い体を作るには、レースの状況を想定した、短時間のインターバル・トレーニングが効果的です。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。