サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.76 トレーニングの原則 個別性の原則(1)

【立ち読み版】2013年1月8日 06:30

ピリオダイゼーションのベースとなる4つの原則

ピリオダイゼーションのベースとなるトレーニングの原則には「個別性」「漸進性」「過負荷」「特異性」があります。科学的で理論的な、固い用語だと感じるかもしれませんが、この原則を理解することは、サイクリストにとってとても重要であり、セルフコーチングに大きく役立ちます。

 

個別性の原則(1)

■「1つの生態系」としてのアスリート

負荷への対応能力は人によって異なります。

アスリートとは、1つの生態系のようなものです。様々な要素が作用し合い、一定のバランスを保ちながら、全体として1つの個を形成しているのです。生態系には環境的な要因が関わってきますが、アスリートには、社会文化的要因、生物学的要因、心理学的要因の3つの要因が関係しています。それぞれがアスリートの成長を阻害または促進する要因になります。

■アスリートの成長を阻害する要因

選手としてのキャリアの伸び悩み、経済的な問題、希薄な人間関係などの社会的要因があると、精神、肉体の両面でトレーニングに費やせる時間やエネルギーが減ってしまいがちです。

生物学的要因にはアレルギー、薬物の使用、不適切な食事などがあります。これらの要因は、効果的なトレーニングをするための身体能力を低下させます。

心理学的要因は見過ごされることも多いですが、トレーニングの効果を下げる一番の原因にもなります。たとえば、失敗することへの恐怖心、自信のなさ、周囲の過度の期待などがあげられます。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。