サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.79 トレーニングの原則 過負荷の原則
過負荷の原則
■超回復理論
トレーニングの目的は、レースでかかる負荷にうまく対処できるように、体を適切に変えていくことです。そのためには、現在の体力レベルに刺激が加わるような負荷をかけなくてはなりません。適切に負荷をかけると疲労が生じ、そこから回復すると体力は以前より向上します。これは「超回復理論」として知られています(以下の図を参照)。
■トップ・レベルのパフォーマンスとは
トップ・レベルのパフォーマンスとは、数年をかけて計画的に負荷をかけ、体を適応させた結果なのです。最適なトレーニングとは、繰り返し適切な負荷を体に与えることです。若干きついと感じる程度の適度の負荷を与えることで、適応後の体力は着実に向上します。
■オーバートレーニング
過負荷は練習中にかけるものですが、体が適応するのは休養中です。体力はトレーニング中にではなく、その後の休養の間に向上するのです。
休養をおろそかにしていると、体力は向上するどころか低下します。これを「オーバートレーニング」と呼びます。
■体の声に耳を傾けることの重要性
セルフコーチングを行うアスリートに見られる最大のミスは、休養の必要性を無視することです。
賢明なアスリートは練習を切り上げるタイミングを知っています。練習を少なめにしたほうが良いタイミングがわかっているのです。自分の体を理解し、体の発する声に耳を傾けることは、とても重要です。
15章では、これを効果的に実践するためのテクニックを紹介します。
■最適な体力レベルに達した後の体力維持方法
トレーニングの負荷が低い状態が長く続くと、体はそれに適応し体力が低下します。これは、いわゆる「体がなまった」状態です。
しかし、いったん体力が最適なレベルまで達したあとは、それほど頻繁ではなくても定期的に適切な負荷を与えることで体力を維持できます。またそうすることで、ハードな練習の合間での回復力を高めることもできます。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。