サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.82 リスクとリターン(1) 練習におけるリスクとリターンの方程式

【立ち読み版】2013年1月16日 06:30

リスクとリターン(1)

■練習内容と株式投資

その日の練習内容を選択することは、株式市場で投資することによく似ています。賢い投資家は、株を購入する時に、その株のリスクとリターンを検討します。株には優良株とペニー株があります。

優良株はリスクがひじょうに低く、時間をかけて着実に株価が上がります。一方、ペニー株は、一般的に小規模企業や新興企業の株で、変動が激しく投機的です。リスクはありますが、うまくいった場合のリターンもかなり高くなります。

投資家は、優良株への投資という安全策をとることもできますし、リスクをとってペニー株で大儲けを狙うこともできます。

■練習におけるリスクとリターンの方程式

どの練習にも、これと同じようなリスクとリターンの方程式があります。

「練習時間や運動強度のリスクは低いが、体力面のリターンも低い練習」もあれば、「時間やエネルギーはかかるが、オーバートレーニングにならないように十分注意すれば劇的に体力が向上する練習」もあります。

BT練習(ブレイクスル―練習)の「リスクとリターン」の適切なバランスを見つけるためには、これまでよりも高いレベルのトレーニングに挑みつつ、十分な休養によってしっかりと体を回復させることが必要です。

このような負荷の高いトレーニングには、本書でこれままで述べてきた、オーバートレーニング、燃え尽き、病気、怪我などのリスクが伴います。これらの問題が生じればトレーニングを休まざるを得ず、以前の体力を取り戻すために、低リスク、低リターンの基礎的な練習から再開しなければならなくなります。

(注:vol.81『問題の防止法と対処法』以降は、14章の内容です。4~13章は立ち読み版には掲載していません)

■練習のリスクとリターン曲線

以下の図は、練習のリスクとリターンの曲線を表しています。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。