サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.83 リスクとリターン(2) 練習強度のリスクを軽減するには
リスクとリターン(2)
■最適な練習頻度と時間は人それぞれ違う
リスクにはトレーニングの頻度、強度、時間、方法の組み合わせが関連しており、アスリートによっても何がリスクかは異なります。ある選手にとってはリスクが高くても、別の選手にとってはリスクが低いケースもあります。
この違いの要因には、経歴、体力レベル、怪我のしやすさ、以前のトレーニングへの適応度、年齢など様々なものがあります。
アスリートにはそれぞれ、最適な練習頻度と練習時間があります。
■「急いては事を仕損じる」にならないために
一流のサイクリストであれば、数日間連続で1日6時間練習して体力を向上させられるかも知れません。しかし、初心者が同じことをしようとすればすぐに体を壊し、何日も練習を休む羽目になるでしょう。いわゆる「急いては事をし損じる」という状態です。
自分に合った練習の頻度と時間を見極め、それを続けることがもっとも大切です。
■練習強度のリスクを軽減するには
練習強度も同じです。
インターバルやハードな集団走行、連日にわたるレースなど高強度のトレーニングを多く行うことはリスクを高めますが、その分、得られるリターンも大きくなります。こうした高強度の練習を、体や健康を損ねずに持続的に行えば、より体力レベルの高い選手になれるでしょう。
しかしほとんどの選手は、このような高強度のトレーニングを、安全に行い続けることはできません。
一定期間、高強度、高頻度、長時間の練習を繰り返す場合は、十分な回復時間を設けてリスクを軽減させなければなりません。頻繁に回復期間をとることが、リスクをコントロールできる範囲内に留めておくうえでのポイントです。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。