サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.88 オーバートレーニングの指標

【立ち読み版】2013年1月24日 06:30

オーバートレーニングの指標

■健康な時の血液検査を基準値として活用する

オーバートレーニングの状態になると、体は様々な形で警告を発します。これらの反応は、それ以上負荷を上げられないようにして、命を守ろうとする働きによるものです。

準備期または基礎期に血液検査をして健康状態の基準値を調べておけば、後で比較することができます。他のトレーニング期中に「オーバートレーニングではないか」と感じたら、血液検査を再度受けるとよいでしょう。

次に紹介するのは、オーバートレーニングに関する血液の主な指標で、1992 年にベテランの中長距離ランナーを対象にした実験をもとに報告されたものです。あなたの最近の検査結果と基準値とを比較してみてください。一般的な標準値ではなく、自分が健康な時に測定した値を基準値にすることを忘れないようにしましょう。

■オーバートレーニングの指標

血液検査マーカー
  • アルブミン
  • アンモニウム
  • フェリチン鉄
  • 遊離脂肪酸
  • グリセリン
  • ヘモグロビン
  • LDL コレステロール
  • 白血球
  • マグネシウム
  • トリグリセリド
  • VLDL コレステロール
行動に表れる症状
  • 無気力感
  • 倦怠感
  • 集中力の欠如
  • 睡眠パターンの変化
  • 焦燥感
  • 性欲減退
  • 動作のぎこちなさ
  • 喉の渇きが増す
  • 脱力感
  • 甘いものへの欲求
身体的症状
  • パフォーマンスの低下
  • 体重の変動
  • 朝の心拍数の乱れ
  • 筋肉痛
  • リンパ腺の腫れ
  • 下痢
  • 怪我
  • 感染症
  • 無月経
  • 運動時心拍数の低下
  • 切り傷の治りが遅い

■確実な指標はなく、判断材料をたくさんみつけることが大切

これらは、どれもオーバートレーニングの確実な指標ではありません。完全に健康で体がトップ・コンディションに仕上がっているアスリートであっても、一見オーバートレーニングと思えるような数値が出る場合もあります。

オーバートレーニング対策として、絶対といえるものはありません。経験を通してオーバートレーニングかどうかの判断材料をたくさん見つけ出していきましょう。

オーバートレーニングの指標下記の問題の多くは他にも原因が考えられますが、オーバートレーニングのサインと見なせます。血液検査マーカーの項目については、各自のマーカーの基準値より大幅に低い場合、オーバートレーニングの可能性が高いと考えられます。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。