サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.97 病気(2) 首チェック
首チェック
■休むかどうかの判断に役立つ「首チェック」
風邪やインフルエンザにかかってしまったら、どうすればよいのでしょうか。いつも通りに練習するのか、練習量を減らすのか、完全に休むべきなのかの判断に役立つのが、「首チェック」です。
■症状が首から上の症状だけの場合
症状が鼻水、くしゃみ、喉の痛み(首から上の症状)だけであれば、練習をしてもかまいません。ただし運動強度はゾーン1か2に下げ、練習時間も短くします。すぐに気分が悪くなるようであれば、練習を止めてすみやかに帰宅しましょう。
■症状が首から下の場合
症状が首から下の場合、たとえば胸の風邪(咳風邪)、寒気、吐き気、筋肉の痛み、発熱であれば、練習をしてはいけません。原因は、急性のウィルス感染だと考えられます。この状態で高強度の練習をすれば、症状が悪化し、重篤な合併症を引き起こし、場合によっては死に至る場合もあります。
■著者の体験:コクサッキー・ウィルスに感染
これら首から下の症状は、コクサッキー・ウィルスが関わっている場合があります。このウィルスは心筋に侵入して、不整脈やその他の合併症を引き起こすことがあります。
私の体験談をお話しましょう。1994年10月、私は発熱、筋肉の痛み、痰が絡んだ咳など、首から下の症状をいくつも伴った、ひどい風邪を引きました。5か月後、心臓が本格的にコクサッキー・ウィルスにやられてしまいました。それからはまともに練習ができず、1年後にようやくトレーニングを再開できました。
どんなレースや体力の低下も、このような高い代償に見合うものではありません。症状を軽く見てはいけません。首から下の症状が見られる呼吸器感染では、コクサッキー・ウィルスの可能性があることを忘れないようにしてください。
※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■
著者紹介
ジョー・フリール
ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。
本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。
『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。
フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。
訳者紹介
児島 修
1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。