トライアスリート・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.3 プロローグ 第3版の刊行に寄せて
プロローグ 第3版の刊行に寄せて
『トライアスリート・トレーニング・バイブル』の初版を書いてから10年以上が過ぎました。そしてこの10年間にさまざまなことが変わりました。そのため、私はもう一度、この本に向き合おうと思ったのです。本書において変わったのは、ほとんどが新たに書き足した部分です。そして、トライアスロンがこの10年で大きく発展したように、本書もかなり分厚いものになりました。私が初めて『トライアスリート・トレーニング・バイブル』を書こうと机に向かった1997年、米国トライアスロン連合には16,212名の選手が登録されていました。トライアスロンはまだ揺籃期にあったのです。ところが2007年、この第3版を執筆し始めたとき、登録選手は100,000名を超えていました。
トライアスロンは、かつて我々の誰もが想像さえできなかった方向へと発展しました。いまやトライアスロンはメジャースポーツです。私が初版を書いたとき、トライアスロンに関する書籍は、私の知る限り本書を除いて5冊しかありませんでした。現在、大きな書店には、トライアスロン専用の棚が設けられています。このほか、テレビドラマの登場人物がトライアスリートであったり、有名人がトライアスロンに挑戦したりするといった現象まで起きています。最近は、「自転車に乗っている」と誰かに言えば、「じゃあトライアスロンはやるの？」と、まず聞き返されます。バイクとランの練習に出かけるところを近所の人に見られても、もはや変人だとは思われません。トライアスリートなのだ、と誰もがわかるのです。10年前は、トライアスリート専用のウェブサイトは、ほぼ皆無でした。しかし今では数え切れないほどあります。この10年間だけで、大変な変わりようです。
このような発展の結果、トライアスロンという競技は別な面でも変化しました。10年前の平均的なトライアスリートは、トレーニング、栄養、機材、レースについて、今のトライアスリートよりも多くの知識を持っていました。もちろん、今ほど情報は溢れていませんでした。この10年間で急増したのは、トレーニングに関する情報だけではありません。トレーニング技術に関する情報も増えたのです。パワーメーターは、1997年にはまったく知られていませんでしたし、トレーニング用のGPS機器や加速度計も、夢の中にしか存在しなかったのです。
トレーニングに関する情報は、あらゆる面で増えました。生理学と栄養学が先頭を走り、それにスポーツ心理学がわずかに遅れをとりながら続いているという状況です。このため1997年当時よりも、トレーニング法や食事法に関しては、はるかに多くのことが明らかになりました。しかし、情報とテクノロジーの爆発的増加により、トライアスリートたちがかつてないほど混乱しているのではないかと、私は憂慮しています。それが、今回『トライアスリート・トレーニング・バイブル』を改訂すべきだと感じた理由です。
この10年、私も指導者として成長しました。初期のころは、次々に出現する新しい展開についていくことができました。ホイール、ランニングシューズ、スポーツ栄養食品、ゴーグル、ウェットスーツ、バイクフレーム、テクニック、レース、ウェブサイト、書籍など、挙げればきりがありません。しかし今はそれもできません。一度に注意を払えるのは、ごくわずか、重要だと思ったことのみです。しかしその結果、より少ないことがらから、より多くのことを知るようになりました。この最新版で私が説明しようと試みたのは、こうしたことがらです。
すべての章には新しい題材を加えました。なかでもかなり加筆したのは、強度（4章）、テクニック（12章）、筋肉（13章）、栄養（16章）についてです。また、私のウェブサイト（trainingbible.com）でも、この本で説明した概念に関する最新情報を載せていますので、参考にしてみてください。
私は、自分の書いた本が、よりよいトライアスロン生活の追求に役立ってほしいと、いつも願っています。もし役に立ったことがあれば（なくても）、気軽にjfriel@trainingbible.comまでメールをください。私はシーズンをとおして多くのレースに参加しています。皆さんと、トライアスロンで経験したことについてお話できることを楽しみにしています。本のおかげで成果があがったと聞くと、いつも本当に嬉しくなります。ともすれば孤独で単調になりがちな執筆という仕事にも、張り合いが出るというものです。
皆さんのトレーニングとレースが成功することを願ってやみません。
ジョー・フリール
コロラド州、ボルダーにて
※この記事は、『トライアスリート・トレーニング・バイブル（TTB）
